持続可能な消費を加速させる、バーチャルツインとは?

ダッソー・システムズとアクセンチュアによる新しいレポートは、製品の生産や消費のあり方を大きく変え、、持続可能性に大きく貢献できるバーチャルツインの可能性を浮き彫りにしています。

バーチャルツイン(デジタルツインとも称されます)は、製品、プロセス、システムをコンピュータ上に構築し表現します。ペットボトルのような小さなものから、都市の空間全体といった複雑なものまで扱うことができます。バーチャルツインは設計、テスト、モデリングを連携させる手法であり、製品開発や生産プロセスのスピードを飛躍的に上げ、企業の持続可能性に寄与します。

この研究レポートでは消費財や建設など5つのケースを取り上げます。本稿ではバーチャルツインにより、2030年までに7.5ギガトンの温室効果ガスを削減し、1.3兆ドルの経済価値を生み出すことができることが明らかにされています。

より持続可能な経済モデルが模索される中、バーチャルツインはさまざまな業界に変革をもたらす可能性を秘めています。

持続可能な消費を目指す

歯ブラシからパソコンやスマートフォン、国際宇宙ステーションに到るまで、プラスチックは私たちの生活のあらゆる局面で利用されていますが、素材としては比較的新しいものです。世界初の合成樹脂であるベークライトが発見されたのは1907年のことです。

現在、身の回りで消費されるプラスチックの量は激増しています。プラスチック生産量は年間約3億トンに上り、研究者は1950年代以降に生産されてきたプラスチックの総量を約83億トンと推定しています。

生産されたプラスチックの大部分はたった一度の使用で廃棄されます。廃棄物は埋め立て地や水路、そして最終的に海へと流出します。自然環境へと排出されたプラスチックは、何世紀にもわたってそのままの状態で残存します。水中では海洋汚染の原因となるマイクロプラスチックと呼ばれる微細な粒子に分解され、海産物に混入する可能性もあります。

ヨーロッパをはじめとする各地域の規制当局は、一部の使い捨てプラスチックを禁止するなど、この問題に取り組み始めています。しかし、このような汚染問題に取り組む以前に、そもそも私たち自身に持続可能性に対する意識が欠如していること、そして持続可能性とは生産や消費のありかたと密接に繋がっているということを、プラスチック問題は浮き彫りにしています。消費財を開発・生産し、在庫を積み上げ、流通網にのせ、購入し使い廃棄する、その一つ一つに伴う選択がすべて環境に影響を与えています。

 

バーチャルツインの可能性

バーチャルツインという手法やそれを支える技術は既に成熟しており、一部の産業分野では導入が進んでいますが、この手法が持つ潜在的な力はまだほとんど手つかずのままです。

ダッソー・システムズとアクセンチュアの共同研究によると、世界のEV開発の85%、同じく風力発電の75%以上でバーチャルツインが既に活用されています。

バーチャルツインを導入できる余地はさらに多く残されています。世界のバーチャルツイン市場は2020年に54億ドル規模と推定されています。また両社の研究によると、今後5年間にわたり同市場の年間成長率は36%と急速に伸びていくものと予測されています。

消費財:急激な変化にデザインの力で対応

消費財(CPG)産業の規模と範囲は広大です。国際貿易量の3分の2を占め、米国のGDPの10%に相当します。消費財産業は農業や化学など、環境に大きな負担をかけるさまざまな産業とも密接にかかわっており、持続可能性の課題を解決する上で大きな影響をもっています。

大規模な例:食品サプライチェーンの最適化によりグローバル生産を実現エイミーズ・キッチン社は、世界30ヵ国で1日100万食以上を生産している大手食品メーカーです。同社では従来、何百もの納入業者からの何千もの品目の配送をスプレッドシートで管理していましたが、バーチャルツインの導入によって計画目標を達成し、無駄を省き、コストを削減し、全体の状況を把握できるようになり、サプライチェーンに予期せぬ変動が生じても適応できる能力を向上させています。

変革に向けた取り組みは全て実を結びます。ダッソー・システムズとアクセンチュアは、3Dモデリングとシミュレーションツールを用いたライフサイクル評価に基づき、バーチャルツインと持続可能な製品開発との関係性を調べました。

この調査により、バーチャルツインを活用し意思決定を行った場合として、原材料の使用コストが従来比1,310億ドル、製品開発コストが同60億ドル、CO2排出量が281トン、それぞれ削減できる可能性があるとの推定が導き出されています。

RETAL社

RETAL社はダッソー・システムズの3DEXPERIENCEプラットフォームを使用しています。プラットフォームにはCATIA(設計)とSIMULIA(解析およびデジタル・シミュレーション)等のアプリケーション群が統合されています。

エイミーズ・キッチン

グローバル・レベルでの食品生産を支える持続可能なサプライチェーン・プランニングとは

バーチャルツインはさまざまな方法で業界の課題解決に貢献します。資源やエネルギー使用量の削減はもちろん、材料開発やサプライチェーン構築、製品ライフサイクルの管理でも、より持続可能性を高めることができます。

さらにバーチャルツインは、業務や事業の全体像を把握し、より適切な意思決定をするためにも役立ちます。バーチャルツインはライフサイクル評価(LCA)技術を備え、人々のさまざまな活動に伴う大気、水、エネルギー使用への影響度をはじき出します。

バーチャル・ツインの卓越した「設計」による、より優れた持続可能性への取り組み。欧州委員会のデータによると、製品が環境に与える影響の80%は、設計段階での決定事項に由来しています。

ペットボトルを例に、世界的なパッケージング・ソリューション・メーカーであるRETAL社とダッソー・システムズが、パッケージングの持続可能性を高める方法を探るケース・スタディを行っています。RETAL社はバーチャルツインを導入し、頑丈でありながら費用対効果に優れ、かつリサイクル可能なボトルの生産を実現しました。さらにその結果、パッケージングの軽量化とプラスチック使用量の削減も達成しました。バーチャルツインにより、設計プロセス全体のスピードを上げ、試作品の量も削減しています。

 

破壊的イノベーションの実現:サステナビリティを推進する、バーチャルツインの重要な役割

国連の2030 年までのSDGsの目標を達成するには、製品やサービスのライフサイクル全体を管理する、急進的で、よりサステナブルな手段が必要です。

バーチャルツインは、その手段の一つです。アクセンチュアとダッソー・システムズの共同執筆による最新のホワイトペーパーは、バーチャルツインが5つの産業界において、2030年までに1兆3,000米ドルの経済価値と7.5ギガトンのCO2排出量削減という複合的なメリットをもたらす、と試算しています。

国連の持続可能な開発目標

17のSDGs(持続可能な開発目標)は、より良い、より持続可能な未来をすべての人々に実現するための世界的なガイドラインであり、貧困の解消、健康と教育の改善、不平等の是正、経済成長の促進、地球温暖化への取り組み、海洋と森林の保護に焦点が当てられています。 SDGは、各国政府の規制の方向性、金融機関の投資戦略、人材のインセンティブ、ビジネス価値向上のための取り組みに影響を与え、ポジティブな変化をもたらし、資源の消費量を削減し、炭素排出量ネットゼロを達成することを目標としています。

ダッソー・システムズは、自らの変革はもちろんのこと、お客様やパートナーと共に変革を実現することで、SDGsの達成を目指しています。ダッソー・システムズはの3DEXPERIENCE Labでは、環境、社会、経済にポジティブな影響を与えるような、革新的なスタートアップ各社を育成し、持続可能なイノベーションを加速させています。

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