Beijing Institute of Architectural Design (BIAD)社
BIAD社は、From Experience to Constructionインダストリー・ソリューションを活用し、スマート・ホスピタル建築における新たな基準の確立を目指し、先進的な設計とシミュレーションにより、患者体験と業務プロセスを向上させています。
未来志向のスマート・ホスピタル構想
北京の長安街沿いに位置する歴史ある病院が、施設の最新化を目指し、注目すべき改修を進めています。幅広く多様な患者に医療を提供してい同院は、科学研究や疾病予防、地域医療への貢献で広く知られています。同院の最新プロジェクトでは、1950年代の建築の特徴を活かしながら、最先端の技術と医療インフラを組み合わせた全面的な近代化が進められています。これには、最先端の外科病棟、専門治療室、高度な診断施設などが含まれます。
旧病棟と最新設備の調和は、課題の一部に過ぎません。改修設計には、病院の業務フローやプロセスの最適化も含まれます。この課題に対応するには、従来のアプローチに加え、スマート・ホスピタルの設計や運営の複雑さを管理する革新的なデジタル・ツールが必要です。
中国の建築設計企業であるBeijing Institute of Architectural Design(BIAD)社は、この野心的な改修に取り組んでいます。同社はダッソー・システムズのソリューションを導入し、建築設計・施工・運営における新しい手法を探求し、複数分野間の孤立化を解消しています。このプロジェクトの主な目的は、医療従事者にとって働きやすく、患者体験を向上させる環境を整備し、運営効率が高く将来にわたって持続可能なスマート・ホスピタルを実現することです。
「ダッソー・システムズと協力して、先進的なモデリングとシミュレーション技術を建築設計に取り入れることで、中国の新しい持続可能な時代にふさわしい病院の設計・建設・運営のあり方を再構築しています。」とXu Quansheng氏(BIAD社、党委書記兼会長)は述べています。「従来の病院設計では、院内の空間と機能が重視されてきましたが、現在はデジタル技術を活用することで、医師・患者・運営者・投資家のニーズをより的確に反映しています。プロセス・シミュレーションと体験型モデリングを活用し、施工前の段階で包括的かつ統合されたソリューションを開発できます。」
病院プロセスのモデリングと患者体験の安全性向上
このトランスフォーメーションの核心は、患者体験の最適化です。航空宇宙設計において、安全性と機能性を確保するためにフライト・シミュレーターが標準的に活用されているのと同じように、このスマート・ホスピタルの改修においても、同様のバーチャル・テストが実施されています。BIAD社のチームは、設計段階で患者の挙動や動線をモデリングおよびシミュレーションすることで、病室のレイアウトから病院業務のプロセスに至るまで、潜在的な課題を早期に特定し、最適な解決策を講じています。
患者の挙動や動線のモデリングにより、潜在的なボトルネックや非効率を特定し、来院から治療、回復、退院までの流れを可視化して最適化できます。これにより、手術室や病棟のさまざまな配置が、患者や医療スタッフの動線に与える影響を検証できます。例えば、手術室や他の治療エリアに最短かつ円滑に移動できるベッドの配置なども考慮できます。
「このアプローチは、従来の空間や環境中心の病院設計にとどまらず、治療中の患者の心身の健康向上に重点を置いています。」とHuang Zhou氏(BIAD社、第8工学研究所、代理副所長)は述べています。「各病院にはそれぞれ独自の特徴があり、空間設計は患者や業務フローに合わせて構築されます。AIを活用することで、業務フローに基づいて患者や診断プロセスを分類し、アルゴリズムによって医療サービスやシステムを最適化できます。ダッソー・システムズの3DEXPERIENCEプラットフォームにより、将来の生成AI活用の可能性が広がります。」
「医師にとって、病院は外来、手術、入院エリアにわたってシームレスな業務フローをサポートし、効率的に役割を果たせるものでなければなりません。診断、治療、検査、ラボ、病棟などが適切に設計され、質の高い医療を提供できる環境を整える必要があります。」(Xu Quansheng氏)
3DEXPERIENCEプラットフォームは強力なソリューションを提供します。チームワークを強化し、上流と下流のプロセスを結び付け、継続的な情報の流れを確保することで、生産性を大幅に向上させることができます。
MODSIMによる効果的なチームワークの推進
モデリング&シミュレーション統合(MODSIM)は、設計プロセス全体を合理化します。3DEXPERIENCEプラットフォームのCATIAは、強力な3Dパラメトリックおよび生成モデリングにより、建物情報モデル(BIM)を迅速に作成し、アイデアを仮想的に検証・改善することで、複雑な業務フローを簡素化し、プロジェクトのスケジュールを加速させます。すべての段階で複数分野の関係者が3DEXPERIENCEプラットフォームで同時に作業を進め、最新版の3Dモデルをリアルタイムで確認できます。
「設計段階で作成されたモデルをシミュレーション・モジュールに直接インポートし、ワンクリックで2つのモデル間をシームレスに切り替えることができます。」とFeng Jing氏(BIAD社、第8工学研究所、スマート・ホスピタル・プロジェクト・マネージャー)は述べています。「さらに、設計モジュールで行った更新がシミュレーションに即座に反映されます。3DEXPERIENCEプラットフォームは強力なソリューションを提供します。チームワークを強化し、上流と下流のプロセスを結び付け、継続的な情報の流れを確保することで、生産性を大幅に向上さることができます。」
設計者は、院内のレイアウトや機能に関する業界標準を遵守する必要があります。BIAD社は今後、標準化設計のナレッジ・ライブラリの構築を計画しています。これには、病棟、手術室、主要な設備室、CTやX線室などが含まれます。また、それぞれのスペースに必要な医療機器やメーカー提供情報が考慮されます。
「同様のプロジェクトを2~3件完了することで、このナレッジ・ベースは一般的な病院シナリオの60%~90%に対応できます。このアプローチにより、今後のプロジェクトで効率を大幅に向上させ、設計期間を半減できる可能性があります。」とLiang Nan氏(BIAD社、情報部副部長)は述べています。
BIAD社は設計選択に3DEXPERIENCEプラットフォームのMODSIMを活用しています。
エアフロー・シミュレーションによる安全性と快適性
現在の医療施設では、環境への配慮が非常に重要になっています。そのため、換気や空気の流れ、感染防止を支える高度なシステムが求められています。BIAD社の設計チームは、SIMULIAを活用して施設全体の空気の流れや汚染物質の移動パターンをシミュレーションすることで、汚染の拡散を抑えるために必要な手術室や感染症病棟の戦略的な配置を把握しています。
「院内のエアフロー・シミュレートにより、病棟から汚染物質の拡散を把握しています。壁やベッド、吸排気の位置に基づき、さまざまなシナリオを仮想的に検証することで、汚染物質を迅速に排出する換気システムの設計を支援しています。これにより、交差汚染のリスクを低減し、患者の快適性や空気の質を向上させることができます。」(Liang Nan氏)
このシミュレーションは、天候や風の状況など、外的要因にも対応します。これにより、強風の影響を受けやすい場所や換気が必要な箇所を特定し、それに基づいて建物の配置を検討できます。
「シミュレーションの結果に基づき、感染症病棟を風下に配置することで、他の建物への感染を防ぐことができます。」(Feng Jing氏)
病室の現状を分析し、必要な電力量をリアルタイムで予測することで、自動システムを適切に調整できます...このアプローチにより、電力使用を最適化し、安全性・快適性・持続可能性のバランスを保ちながら、患者の健康を最優先できます。
都市の複雑性と持続可能性の調和
ヘルスケア・セクターでは、環境への影響を低減しながらコスト効果を高める圧力が増しています。SIMULIAの高度なシミュレーションツールを活用して、電力使用量や水管理、HVACの性能を検証することで、改善可能な領域を特定できます。例えば、廃熱回収システムを使用することで、エネルギーの浪費を減らして効率を向上させることができます。シミュレーションによる知見は、病院のカーボン・フットプリントを削減するだけでなく、電力やメンテナンス・コストの長期的な削減にもつながります。
「病室の現状を分析し、必要な電力量をリアルタイムで予測することで、自動システムを適切に調整できます。これにより、晴天時には自然換気を活用し、換気設備の使用を軽減できます。一方、スモッグ発生時には、室内換気に切り替えることができます。このアプローチにより、電力使用を最適化し、安全性・快適性・持続可能性のバランスを保ちながら、患者の健康を最優先できます。」(Liang Nan氏)
MODSIMツールは、都市部にある病院敷地内での複雑な物流作業の管理にも重要な役割を果たしています。北京中心部にある同院では、施工に必要な足場が制限されるなど、避けられない制約があります。さまざまなシナリオをシミュレーションすることで、搬入・搬出、交通量、施工順序などに伴う潜在的な課題を予測できます。これにより、施工中の混乱を最小限に抑えながら、改修期間を通じて円滑な病院運営を維持できます。
「例えば、施工スケジュールを病院の業務フローに沿ってデジタル・マッピングすることで、主な医療業務を維持しながら、他の工区で作業を進めることができます。」(Huang Zhou氏)

建物のライフサイクル全体を管理する先行計画
病院は時代に沿って進化し、新しい技術を取り入れながら、将来の医療ニーズに対応するために建物設計を適応させる必要があります。ダッソー・システムズの建物情報モデリングおよびシミュレーション機能は、将来の増築や病室の改修を仮想的に計画・検証し、既存のレイアウトとシームレスに統合します。設計段階で収集・検証済みのデータを、建設から運用・保守に至るまで、すべての段階で意思決定に活用し、病院全体の効率を向上させ、耐用年数を延ばすことができます。
「このプロジェクトでは、長期的な建物のライフサイクル(50年以上)、短期的な設備のサイクル(5〜10年)、そして医療機器の急速な進化(1〜2年ごとに更新されるパルス・オキシメーターなど)の間でバランスを取ることが課題でした。3DEXPERIENCEプラットフォームは、複数分野のデータを単一のプラットフォームに統合し、医療機器が全体設計に与える影響を可視化できます。」 (Feng Jing氏)
ダッソー・システムズと協力して、建物設計だけにとどまらない、大きな変革を推進しています。
将来の病院設計のベンチマーク
このイノベーションは、将来の医療システムの指標となります。BIAD社は、最先端のデジタル・ツールと持続可能な取り組みに基づく統合型アプローチにより、スマート・ホスピタルの設計と運営管理における新たな基準の確立を目指しています。
「ダッソー・システムズとのコラボレーションは、設計から建設、運用まで、病院ビルの業務フロー全体を合理化することを目的としています。「モジュラー・ユニットの標準化により、設計プロセスを加速させ、建設前に病院の機能を定義しています。ブロックを組み立てるように設計に取り組んでいます。以前は各部材を個別に設計していましたが、現在はさまざまな形状やサイズの標準ブロックを開発することで、より効率的に部材を作成できるようになりました。」(Liang Nan氏)
このコンセプトは、プロダクト化と呼ばれています。BIAD社は、建築部材をモジュラー・ユニットで標準化することで、設計・建設期間を短縮し、現代の医療施設の複雑なニーズに対応しながら、再現性と拡張性の高いソリューションを提供しています。
「プロダクト化は今後さらに普及し、精密化が医療の未来を牽引し、インテリジェンスがそれを支えるでしょう。」(Huang Zhou氏)
建物の性能と耐用年数が重視される中、BIAD社は業界の最前線に立っています。同社は現在、設計・施工にとどまらず、建物がライフサイクル全体を通じて最適な性能を維持できることを目指しています。
「中国政府は既存建物の改修を推進しています。当社はこの目標に沿って、新旧の建物を組み合わせ、不必要な新築や解体を減らし、炭素削減目標の達成を目指しています。「ダッソー・システムズと協力して、建物設計だけにとどまらない、大きな変革を推進しています。これは、建物の機能や環境への影響、そして次世代に向けた持続可能性を再考する取り組みです。」

BIAD社について
Beijing Institute of Architectural Designは、1949年に設立された中国の国有大手建築設計企業です。同社は、建築設計、都市計画・設計、建築コンサルティング、建築コスト・コンサルティング、観光計画・設計、ランドスケープ設計、環境エンジニアリングを専門としています。
詳細情報:www.biad.com.cn
