Prodtex社

Prodtex社は、エバートンのヒル・ディキンソン・スタジアムの外装取り付け工程をデジタル環境で事前に検証。作業上のリスクを早期に特定し、安全性の向上と約35万ユーロのコスト削減を実現しました。

エバートン・スタジアムの施工をデジタルで計画

英国のエバートン・フットボール・クラブの新本拠地、ヒル・ディキンソン・スタジアム。最初の外装パネルの取り付けから7カ月後、熟練の作業員たちは872枚目のパネルを固定しました。東西のスタンド全体を包み込む、樽型の外装を仕上げる最後の1枚です。この頃には、取り付け作業はすっかり定着していました。施工チームは、専用に改良されたクレーンのアタッチメントで、研磨されたアルミニウムパネルを所定の位置へと誘導しました。その作業手順は、バーチャルツイン上で事前にテストし、改善を重ね、有効性を確認したものでした。

建設現場で、ここまで確実な見通しを持って作業を進められることは多くありません。建設業界では従来、問題が起きてから現場で解決する方法に頼ってきました。しかし、形状の異なる約1,000枚ものパネルを限られた工期で取り付けるには、成り行き任せにはできません。そこで、元請けのLaing O’Rourkeと専門工事会社のLindner Praterは、エンジニアリング企業のProdtex社を起用し、外装取り付けの全工程をデジタル環境で事前に検証することにしました。

「当社に求められたのは、取り付け工程をデジタル環境で検証し、着工前にリスクを低減することでした」と、Prodtex社の技術責任者、Ricky Cartwright氏は語ります。「通常、当社に声がかかるのは、取り付けの段階で問題が発生したときや、すでに設計が確定した後です。その点、今回はほぼ理想的なプロジェクトでした。設計も施工方法もまだ完全には固まっていなかったため、工程全体を評価し、最適な方法に向けて変更を加えることができたのです」

建設分野へのダッソー・システムズのソリューション導入を専門とするProdtex社のチームは、取り付け開始の数カ月前から作業に着手。スタジアムの構造物を詳細な3Dモデルで再現し、3DEXPERIENCEプラットフォームのCATIAとDELMIAを使って、外装の取り付け工程をシミュレーションしました。設計、構造性能、工程シミュレーション、作業計画を単一のコラボレーション環境に統合することで、チームはリスクを特定し、遅延を回避。取り付けコストを推定35万ユーロ削減しました。

DfMAアプローチで施工工程を最適化

Prodtex社は、高度なデジタル・マニュファクチャリングの考え方を建設に応用することを専門としています。その取り組みの中心となるのが、製造・組み立てを考慮した設計手法「DfMA(Design for Manufacturing and Assembly)」です。製造が始まるはるか前に、実際にどのようにつくるのかを詳細に把握します。

「建設シミュレーションの多くは、全体的な計画を対象としています」とCartwright氏は語ります。「部材が搬入され、クレーンが動き、スケジュールに沿って所定の位置に構造物が現れます。しかし、工程が進むにつれて搬入や運搬などの描写は大まかになり、多くの部分が、まるで妖精の魔法で組み上がったかのように見えます。当社はCATIAとDELMIAを使い、実際に何が行われるのかを細部まで検証します。大きなリスクがある作業や、何百回も繰り返す工程であれば、詳しく掘り下げる価値があります。小さな改善も、積み重なればすぐに大きな効果につながります」

現代の建設には、ますます高度な対応が求められています。建築家たちは、コストや工期を維持しながら、複雑な形状や、より持続可能な新しい材料を取り入れているためです。エバートンのスタジアム建設で特に大きな課題となったのは、建物の曲面に沿って外装パネルをどのように取り付けるかでした。吊り上げ手順や作業箇所へのアクセスはまだ検証されておらず、工程計画は仮定に基づいて立てられていました。

「1枚のパネルの取り付け方が分からなければ、約1,000枚の取り付けに必要な時間をどう見積もれるでしょうか」と、Prodtex社のデジタル・マニュファクチャリング責任者、James Wilkinson-Brown氏は語ります。「『作業員は実際に、安全な姿勢でそのボルトに手が届くのか』『この工具は適切か』『何かが干渉しないか』『この工程を何百回も繰り返したとき、作業員にどのような影響があるか』といった問いへの答えが必要でした」

建物が曲面で構成されているため、外装パネルは厳密には1枚ずつ形状が異なります。それでも、取り付けの基本的な手順は共通しています。そのため、Prodtex社のチームは、すべてのパネルを個別にシミュレーションする必要はありませんでした。代わりに最も難しい条件に着目し、スタジアムの曲面屋根の中でも、曲がりが最もきつく、最も垂直に近い部分に位置するパネルの縦一列について、取り付けをシミュレーションしました。

「最も曲率が大きく、作業条件も最も厳しいパネルを問題なく設置できれば、「このパネル列は曲率が最も大きく、作業箇所へのアクセスも最も困難でした」とCartwright氏は語ります。「ここで施工できる方法を確立できれば、ほかの箇所にも無理なく対応できます。主要な関係者全員にヒアリングを行い、予定している工程や機材、技術的な条件を把握しました。そのうえで、デジタル環境での事前検証を準備したのです」

建設シミュレーションの多くは、全体的な計画を対象としています。部材が搬入され、クレーンが動き、スケジュールに沿って所定の位置に構造物が現れます。しかし、工程が進むにつれて搬入や運搬などの描写は大まかになり、多くの部分が、まるで妖精の魔法で組み上がったかのように見えます。当社はCATIAとDELMIAを使い、実際に何が行われるのかを細部まで検証します。大きなリスクがある作業や、何百回も繰り返す工程であれば、詳しく掘り下げる価値があります。小さな改善も、積み重なればすぐに大きな効果につながります。

Ricky Cartwright氏

Prodtex社、技術責任者

すべての取り付け工程と機材を単一のプラットフォームでシミュレーション

Prodtex社のチームは7週間にわたり、Laing O’Rourke社およびLindner Prater社と協力し、3DEXPERIENCEプラットフォームで取り付けの全工程を構築し、検証しました。Prodtex社は、他社のシステムで作成された建物と外装の詳細モデルをCATIAに取り込み、DELMIAで取り付け作業の手順をシミュレーションしました。

共通のプラットフォームを使うことで、エンジニア、計画担当者、施工パートナーが一緒に工程を評価できました。シミュレーションには、機材データ、メーカーの仕様、現場の制約条件に加え、DELMIAの人間工学評価用の仮想マネキンも組み込みました。これにより、クレーンがどのように動き、作業員がどのように部材に手を伸ばすかを確認しました。

「当社が提供する価値の大きな部分は、すべての関係者と情報を同じ環境に集約することにあります。建築モデル、BIMデータ、現場の搬入・運搬に関する情報、さらには衛星画像まで統合します」とCartwright氏は語ります。「施工会社にとって、全体像と細かな作業工程を同時に把握するのは容易ではありません。シミュレーションによって、その両方を見渡せるようになりました」

Prodtex社は、吊り上げ方法や作業箇所へのアクセス方法の比較から、人間工学的な評価、手の届く範囲の分析まで、作業のあらゆる側面をデジタル環境での事前検証に組み込みました。「このボルトには手が届かない」「この場所には近づけない」といった問題は、外装設計チームや機材の供給会社に継続的にフィードバックされました。各社はそれを基に修正を加え、変更後の構成で再び検証しました。

「パネルの位置合わせには問題がありませんでした」とCartwright氏は語ります。「しかし、手作業でのボルト締めには懸念がありました。視界が悪く、作業箇所にも無理な姿勢でアクセスしなければなりませんでした。上肢の作業姿勢を評価するRULAのスコアは4でした。これは、身体への力学的な負荷や筋骨格系へのリスクを、1(最も安全)から7(危険)までの段階で評価する指標です。極めて危険というわけではありませんが、何百回も繰り返す作業としては許容できる水準ではありませんでした。最大の問題は、吊り上げ用フレームの取り外しでした。移動式高所作業車(MEWP)の作業バスケットには1人分のスペースしかありませんでしたが、この作業には2人が必要でした。さらに、片側のボルトには手が届くものの、反対側は高所作業車から危険なほど身を乗り出さなければ届きませんでした。この問題を解決しなければ、工期の遅延や危険な作業につながり、外装パネルを損傷するおそれもありました」

シミュレーションの結果を受け、Lindner Praterは吊り上げ治具の一部を再設計し、片側から作業できるようにしました。これにより、RULAスコアは1まで改善しました。また、2人で作業できるよう、より大型の高所作業車に変更しました。

Prodtex社のエンジニアは3DEXPERIENCEプラットフォームを使って、エバートン・スタジアムの外装取り付けをデジタル環境で事前に検証。施工開始前に作業手順を確認し、作業員の安全性を高め、取り付け工程を最適化しました。

VRによる施工体験から、作業員ならではの気づきを得る

作業員の視点から施工を理解するため、Prodtexは仮想現実(VR)でも取り付け手順を検証しました。作業員はVRヘッドセットを装着して仮想のスタジアムに入り、高所作業車からパネルを所定の位置へと誘導し、ボルトを締めました。現場で行う作業を、そのまま体験したのです。

「シミュレーションした作業の中には、『これは絶対に無理だ』と一目で分かるものもありました。例えば、ボルトに手を届かせるために、作業バスケットを鉄骨構造の内側に入れるようなケースです」とWilkinson-Brown氏は語ります。「VRで見ることで、表計算シートでは決して伝えられないリスクが、はっきりと分かりました」

VR体験の特に大きな効果の一つは、エンジニアリングチーム以外の関係者にも議論を広げられたことです。シミュレーションが非常にリアルなため、施工安全の専門家、搬入・運搬の計画担当者、現場管理者も作業工程の中に入り、自ら評価できました。経験豊富な施工担当者からは、チームが当初想定していなかった実務上の課題も指摘されました。

「最初、その施工担当者は『図面さえもらえれば、当日現場で何とかする』と言っていました」とWilkinson-Brown氏は語ります。「しかし、VRシミュレーションを試すと、すぐに問題点を指摘し始めました。『あそこには手が届かない』『バスケットから身を乗り出さなければならないが、風があれば無理だ』『もっと大きなバスケットか、もう1人の作業員が必要だ』『このプレートが胸に当たるから、実際にはこの作業はできない』といった具合です」その施工担当者は、作業手順を事前に試し、意見や改善案を伝えることで、最終的に自分の作業をより安全で効率的なものにできる機会を高く評価しました。

建設業界は長年、現場で問題を解決する方法に頼ってきました。しかし、実際の作業に先立って事前検証を始めると、誰かが工具を手にする前に、いかに多くの問題を解決できるかが分かります。…ダッソー・システムズの建設向けテクノロジー・ソリューションは、こうした変革を後押しします。建築家、エンジニア、施工会社が、まず仮想空間で建設し、不確実な要素を事前に解消できるようにするのです。

James Wilkinson‑Brown氏

Prodtex社、デジタル・マニュファクチャリング責任者

建設業界の安全性と労働力不足の課題への取り組み

このプロジェクトは、リスク管理が常に求められる建設業界において、デジタル技術を活用した計画が安全性の向上にどう貢献するかを示す好例です。建設業は今なお、世界で最も身体的な負担とリスクが大きい産業の一つです。作業員は高所で長時間働き、重い資材を吊り上げ、複雑な機械を操作しています。手の届きにくい位置にあるボルトや、うまく収まらない工具など、設計上の比較的小さな見落としでも、作業を何百回も繰り返せば、長期にわたる身体の障害につながる可能性があります。

ダッソー・システムズの高度な建設モデリング、シミュレーション、バーチャルツイン機能は、こうした問題の早期発見と是正を支援します。これにより、作業員をより確実に保護し、不要なリスクを回避できます。 また、作業の見通しを立てやすくし、効率を高め、次世代にとって魅力的な仕事にすることで、世界的な労働力不足への対応にも重要な役割を果たします。これは、建設をより安全でスマートにし、生産性を大きく高める未来への一歩です。

「建設業界は長年、現場で問題を解決する方法に頼ってきました」とWilkinson-Brown氏は語ります。「しかし、実際の作業に先立って事前検証を始めると、誰かが工具を手にする前に、いかに多くの問題を解決できるかが分かります。製造や取り付けを終えた後よりも、早い段階で設計を修正する方が、コストを抑えられるのは明らかです。リスクも減り、仕事のやりがいも大きく高まります。ダッソー・システムズの建設向けテクノロジー・ソリューションは、こうした変革を後押しします。建築家、エンジニア、施工会社が、まず仮想空間で建設し、不確実な要素を事前に解消できるようにするのです」

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Prodtex社について

同社は、産業の発展に向けた革新的で綿密に計画された構想の創出を支援することで、デジタル製造の未来を形作っています。市場のリーダーや大学と緊密に連携し、製造分野全体の柔軟性、効率性、品質の向上に取り組んでいます。主に自動化を専門とし、バーチャル生産における豊富な経験と、実世界の産業課題に対する深い理解を組み合わせています。CATIA、SIMULIA、ENOVIA、DELMIA、3DEXPERIENCEソリューションをはじめ、ツーリングおよび治具設計、柔軟で再構成可能なツーリング、バーチャル生産計画、ロボット・プログラミング、トレーニング、研究、コンサルティングなど、幅広いサービスを提供しています。

詳細については、www.prodtex.com

をご覧ください。