コベルコ建機
コベルコ建機は、Single Source for Speed およびIntegrated Heavy Machinery インダストリー・ソリューション・エクスペリエンスを活用することで設計プロセスを最適化し、組織全体で情報へのアクセスを改善しています。
私たちの市場は急速に進化しています。このため、高品質で高性能かつ規制遵守のソリューションおよびメンテナンス・サービスを提供して差別化を図る必要があります。私たちは、これをダッソー・システムズの技術により実現できると信じています
何十年にもわたる 建設機械のイノベーション
神戸製鋼所の子会社であるコベルコ建機は、約90年前に日本初の電気ショベルを開発しました。この技術開発における偉業は、同社のその後何十年にもわたる先駆的な技術開発の基盤となっています。例えば、作業高さが65mを超えるKOBELCO SK3500Dはギネス世界記録に認定されており、現在世界最大の建物解体専用機です。
また、同社は建設機械イノベーションの強力な礎を基盤として変革を続けるため、ダッソー・システムズとのパートナーシップを強化しています ‐ ダッソー・システムズの採用を2000年に開始、設計にCATIA V5、製品データ管理にENOVIA SmarTeamを導入しました。
コベルコ建機のグローバルITシステム部 担当部長 兼 総合サポートグループ グループ長である宍戸義昭氏は「私たちの市場は急速に進化しています」と述べます。「このため、高品質で高性能かつ規制遵守のソリューションおよびメンテナンス・サービスを提供して差別化を図る必要があります。市場において成功を収めるには、デジタル・トランスフォーメーションを推進し、膨大なデータを活用する体制を整える必要があります。私たちは、これをダッソー・システムズの技術により実現できると信じています」
建設における技術革新の障壁
コベルコ建機は、新製品開発においてCATIA V5を活用した3Dモデリングを大きく前進させ、製品設計の短縮や設計サイクルの改善を実現してきました。しかし、そのプロセスは高度にカスタマイズされたレガシーシステムを使用しており、限られた組織内でしか情報を活用できていないという課題がありました。
「当社は、長年にわたっていくつもの個別の技術アプリケーションを採用して最適化してきました」とコベルコ建機のグローバルITシステム部ECMシステムグループ グループ長である原田健太郎氏は語ります。「当社の設計チームは、日本、中国、インドの工場に分散していますが、全員が同じ製品設計に取り組む必要があります。一元化されたシステムを利用できない場合、各チームが独自にデータを管理しなければなりません。現在、社内システムを通じて一晩かけてデータを共有していますが、このプロセスは煩雑で、データが重複する原因となり、すべてを同期するのに時間がかかっています。」
また、製品が大規模で複雑なため、大型のアセンブリを管理できないことが同社の大きな課題でした。「建設機械1台の3Dモデル全体を開くことができなかったため、設計作業を段階的に行う必要がありました」と宍戸氏は語ります。
さらに、3D設計データをエンジニアリング以外の部門と共有できないため、同社の製品販売およびアフターサービス・チームがアクセスできるデータは限定されていました。宍戸氏は「受注後製造が前提の弊社においては、販売チームが3Dモデルを利用できなければ、完成予定の製品をお客様に予め示すことが非常に難しく、製品仕様をお客様に正確に伝えることが困難です。」と述べます。

実証済みのビジネス・トランスフォーメーション・プロセスを採用
コベルコ建機の経営陣は、ダッソー・システムズの“OOTB (Out-of-the-box)”ソリューションを採用することで、既存の課題に対処できるだけでなく、最先端のデジタル技術を活用したイノベーションを促進できることに気付きました。
コベルコ建機は、新しい技術の導入を最大限に活用するため、ダッソー・システムズの バリュー・エンゲージメント・プロセスを採用しました。このアプローチには、4つの明確な段階:Value Assessment(バリューの評価)、Value Definition(バリューの定義)、Value Commitment(バリューのコミットメント)、Value Delivery(バリューの実現)が含まれています。
まずダッソー・システムズは、Value Assessment(バリューの評価)の段階でコベルコ建機と密に連携し、現状のビジネスを分析して主な要件を特定しました。次のValue Definition(バリューの定義)の段階で新しいソリューション導入のロードマップ立案をサポートし、それを展開することで得られる価値を特定しました。さらにValue Commitment(バリューのコミットメント)の段階では、さまざまなチームによる導入準備をサポートし、最終段階のValue Delivery(バリューの実現)を経て、2025年5月に満を持してサービス・インを迎えました。
現在は、さらなるソリューションの適応拡大に向けて、第二弾のバリュー・エンゲージメント・プロセスの実施を検討しています。

建設機械設計プロセスの加速
すべての設計データが統一された環境で管理されることで、コベルコ建機の各チームは拠点間でデータを夜間に共有するのを待つ必要がなくなります。「国内外の設計部門間の連携を強化することで、設計スピードを大幅に加速させることができます」と宍戸氏は述べます。
CATIAによる大規模アセンブリ処理機能により、設計プロセスも変革可能です。「150%BOMを活用することで、約300の製品仕様のバリエーションを効率的に設計することができます」と原田氏は語ります。「つまり、オプション仕様を含めて製品全体を表示しながら、共通化率を向上させ、包括的な空間設計に基づくモジュラー設計を推進することができます。」と宍戸氏も加えます。
また、CATIAにより、設計者が構造や部品の共通化やモジュール化をさらに容易に検討できます。「ボタンひとつで共通部品に変更を適用できるため、3Dモデルをひとつひとつ開いて変更する必要がなくなります」と宍戸氏は述べています。
コベルコ建機 技術開発本部 開発企画部 企画グループの菅朋美氏は、「3DEXPERIENCE CATIAを使って電気制御設計を行っていますが、回路設計とハーネス設計を連携できる機能が最も優れた特徴です。例えば、回路に設計変更があると、それが即座にハーネス設計に連携・反映されます。」と加えます。
同時に、コベルコ建機のエンジニアは、構造解析の評価にSIMULIAを活用しています。「SIMULIAにより、物理的なプロトタイプの精度を向上させて、通常の約半分の期間で量産を開始できると考えています」と宍戸氏は述べます。
コベルコ建機は、これらのメリットを組み合わせて、エンジニアリング・プロセスを強化し、組織全体の効率を上げることで企業価値を高める製品やサービスを提供し、企業としての持続可能性を向上することを期待しています。

データの汎用化
ENOVIAの製品データ管理機能により、誰もが単一の一元化されたBOMにアクセスし、グローバル組織全体で3Dモデルを活用できるようになります。これにより、同社のすべての部門に変革がもたらされることが期待されています。
「製品販売の見積もりシステムおよび部品カタログシステムのベースに3Dモデルを使用したいと考えています」と原田氏は述べます。「これにより、建設機械の受注確度や、お客様の要件および製品仕様を確認する精度を高めて、手戻り作業を減らすことができます。」
コベルコ建機は、NETVIBESを使用することで、過去の購買データに基づいて、より構造化および定式化された調達プロセスを構築し、よりスマートな購買決定ができることを期待しています。
現在、コベルコは年間4億ユーロ(560億円)を購入部品に費やしています。これらの部品に関するデータをより正確に把握することで、適切なタイミング、適切な価格で、最適なサプライヤーから調達できるようになります。さらに、価格交渉の強化や、サプライヤーの集約、過剰在庫の最小化も可能になります。仮に調達コストを2%削減できれば、年間で800万ユーロ(11億円)のコスト削減につながると期待しています。
生産プロセスの改善
DELMIAのスマート・ファクトリー機能は、さらなる価値を提供します。「DELMIAを活用することで、各ワークステーションでシミュレーションされた作業時間と実際の作業時間の差異を分析して、精度を向上できます」と宍戸氏は述べます。「各工場で1作業あたりのサイクルタイムを15分から12分に短縮できれば、生産量を1つの工場あたり年間1万台から1万2千台に増やすことができる見込みです。」
コベルコ建機は、現在の導入を完了した後、プラットフォームのさらなる機能活用を計画しています。「DELMIA Aprisoの製造実行システムによる、海外工場における品質検査プロセスのより適切な管理および、出荷重量の見積もりを計画しています」と宍戸氏は述べます
製品の動作をお客様に見せることで、製品への理解が深まり、より有意義な対話が可能になると考えています
顧客志向の未来
同社は、NETVIBESを使用し顧客からのフィードバックおよび要望を収集することで、製品および市場マーケティングに活用することも計画しています。「当社のサービス・販売担当者は、直接顧客に接しフィードバックを得ることを重視しています」と宍戸氏は述べます。「このようにして得られるインサイトを活用して、当社の製品を顧客ニーズに確実に対応させることができます。また、よりターゲットを絞り込んだマーケティング・キャンペーンを展開することもできます。」
コベルコ建機がデータを活用して顧客体験を向上させる方法は、これだけではありません。3DEXCITEを使用して、製品をリアルに表現する魅力的なマーケティング資料を作成できます。「製品の動作をお客様に見せることで、製品への理解が深まり、より有意義な対話が可能になると考えています」と宍戸氏は述べます。
ダッソー・システムズの技術が提供する新しい機能をさらに活用するため、コベルコ建機はクラウドへの移行を最優先事項としています。この目的に向けてダッソー・システムズは同社とともにクラウド戦略を展開し、新しい機能の評価環境として、プロジェクトでクラウドを活用し、大きな成果を得ています。さらに、将来的にはプロダクション環境のクラウドへの移行も検討しています。
また、同社はバーチャルツインの活用拡大も進めています。「バーチャルツインを活用して、実世界で何が起きるのかを予測することも当社の目標です。製品を製造する前に問題点を解決することで、より精度の高い製造を達成できます。また、正確なメンテナンス作業指示により、製品を迅速に再稼働させてダウンタイムを最小限に抑えることができます。最終的に、我々はこれらの機能によって、お客様にもたらす価値および満足度を最大限に高め、永続的な成長を達成し、イノベーションをリードするグローバル・ブランドを目指します。」と宍戸氏は述べます。
コベルコ建機について
コベルコ建機は、1930年に日本初の電気ショベルを発売して以来、油圧ショベル/クローラ・クレーンなどの主力製品、建築機械サービスおよび情報を提供し続けています。その販売・物流ネットワークはほぼ全世界にわたり、日本国内で4つの工場を稼働および中国、タイ、インドの各国に生産拠点を構えています。
コベルコシステムについて
顧客の多様なニーズに対応することが、コベルコシステムのミッションです。同社は、顧客の業界における直接的な経験を通じて、豊富なビジネス知識・技術を培っています。また、その専門知識と世界中でITシステムを構築してきたグループ会社の広範にわたる経験を活用して、先進的なシステムの構想、設計、開発、保守、運用に関するノウハウを融合させています。