PowerFLOW:キーオフおよびソーク

 

キーオフおよびソークの熱条件のシミュレーション

 

車両を構成する部品の多くは非常に高温になるため、周囲の部品の故障や劣化を誘発し、安全性、耐久性、保証の面で深刻な問題を引き起こす恐れがあります。コスト削減や軽量化のためにプラスチックの部品が使われるケースが増えていますが、こうした部品は温度の変化に非常に敏感です。グローバル化の波が押し寄せ、車両や車両プラットフォームは、極めて広範な温度範囲で動作することが求められています。設計段階の後半で変更作業を行うとコストがかさみ、製造時に不具合が起きる可能性もあります。こうした事態を回避するためには、部品の配置、熱遮蔽を慎重かつ詳細に解析しなければなりません。究極の熱応力シナリオが「キーオフ」または「ソーク」です。これは、エンジンが高温になった車両が突然停止し、冷却風流れがないためにアンダーフードの温度が上昇する現象です。

技術面での課題

車両の熱設計は従来、熱風洞内でのプロトタイプのテストに大きく依存してきました。このテスト・プロセスには非常にコストと時間がかかり、柔軟性に欠けています。テストでは熱電対装置を使用しますが、その場合、テスト・エンジニアが熱に関する問題が発生しそうな場所をあらかじめ予測しておく必要があります。しかし、アンダーフードのフローの放射は本質的に強い乱流であるため、予測は非常に困難であるか、不可能です。再設計と再テストを繰り返す手法は、行き当たりばったりでコストがかかります。その場合、最終的に最高温度の場所を特定できないことも珍しくありません。

ヒート・ソークは、温度が急激に上昇した後、対流冷却を介して次第に低下する、本質的に非定常な問題です。これを風洞内で視覚化することはほぼ不可能ですが、構成部品の配置と保護を最適に行うには、これらの複雑な構造を理解しなければなりません。超高温になる部品の場合は特に、周囲の流体における熱伝導、熱放射、熱対流の複雑な相互作用が温度に反映されますが、これを正確に予測するのは極めて困難です。

車両開発プロセスのスピードアップと改善を求める声が市場で高まっている今、車両設計の初期段階でソークに対処する効果的な方法が必要なのは明らかです。関連する物理特性を取り込むには、高忠実度のシミュレーションが必要です。しかし、従来のナビエ・ストークスベースの流体シミュレーション・コードでは、ソークのような非定常の問題のシミュレーションは困難で時間がかかります。なぜなら、こうしたコードは本質的に非定常ではないためです。

SIMULIAソリューション

PowerFLOWスイートは、ソークの問題への対処に理想的です。PowerFLOWは、独自の本質的に非定常な格子ボルツマン法に基づく物理解析により、極めて複雑な形状でも実世界での非定常条件を正確に予測できます。PowerTHERMは、完全連成型で精度の高い、熱伝導および熱ふく射ソルバーです。PowerFLOWとPowerTHERMを併用することで、キーオフ直後のピーク温度を正確に予測し、車両全体の流れ場および温度場を視覚化できるようになります。これによって、問題のある領域を特定し、設計を改善して、熱シミュレーションおよび解析により問題を排除するための推奨事項を提供できます。シミュレーションとモデルの設定に必要な時間が短縮するため、ベースラインに設計変更を迅速に加え、ソーク性能の改善を評価できます。

SIMULIAソリューションを使用すると、以下のように熱のキーオフおよびソークの問題に対処できます。

  • 構成部品のピーク温度を制限して、火災の危険や部品の故障を回避する。
  • 遮熱材や断熱材を使用したり、構成部品の配置を改善したりすることで、壊れやすい部品の保護戦略を最適化する。
  • パワートレイン内に熱エネルギーを保持して、コールド・スタートの挙動を促進する。