PowerFLOW:HVACシステムの性能

 

対象の業界:自動車、商用車、オフハイウェイ機器、鉄道車両

 

HVACユニットおよび配風システムは、車室内の空調制御機能に欠かせない重要な要素です。ドライバーと乗員の快適性を確保するには、望ましいレベルの温度と湿度の空調空気を適切な量だけ対象の場所に提供する必要があります。車両を安全に運用するには、適切なデミストおよびデフロスト機能が必要ですが、そのためには十分な流れの提供も重要です。

同時に、流れの提供に必要なエネルギーを最小限に抑えて燃費を改善する必要もありますが、それに伴って発生する騒音という副作用も制限しなければなりません。こうした目標を達成するには、車両開発プロセスの中で、空調制御システムのダクトとレジスターの設計を慎重に評価し、大きく異なる周囲条件に対応できるように最適化します。

技術面での課題

車室内のパッケージングでは、スペースが狭いため、HVACユニットおよび配風システムに利用できる物理的な空間は非常に限られています。空調制御システムの設計者は、車室内の他の構成部品によって生じる形状の制限に対処する必要があることが珍しくありません。そして多くの場合、設計変更がシステムの性能に及ぼす影響を事前に把握することはできません。

さらに、乱流、熱混合、ふく射といった複雑な物理特性が、エアフローの分布、ファンの電力要件、車室内での気温の分布を決定するうえで重要な役割を果たします。しかし、そうした物理的効果の視覚化と測定は、実際の車両アプリケーションでは困難です。

環境風洞において、または幅広い周囲条件下での道路テストによってシステムを最適化するには、多くの手間と時間がかかります。特に、テストの一部を非定常の条件で行わなければならない場合はなおさらです。評価マトリクスは、HVACシステムのさまざまな運転モード(デフロスト、換気、2層、フットウェル)により、大きくなる傾向があります。

 

SIMULIAソリューション

PowerFLOWにより、非常に複雑な形状をしていることの多いHVACユニットおよび配風システムに関連する流れおよび熱の特性を正確に予測できます。これらには、乱流効果と熱混合に加えて、伝導、対流、ふく射の3つのモードによる包括的な熱伝達があります。

設計を評価する場合、配風システム内の圧力損失と流れ分配、ならびに複数の出口を通るエアフローのパターンを解析できます。熱解析の場合は、HVACシステム構成部品と周囲の構成部品の間の熱伝達の効果を含め、気温分布を計算できます。流れおよび熱解析に加えて、ファンと配風システム(ダクトやレジスターなど)を通る流れを含む、空力音響騒音解析も実行できます。

解析から得られたデータや情報は、HVACシステム最適化のために効果的に応用できます。PowerFLOWのプロセスではボリューム・メッシュの生成は完全に自動化されているため、ケースの設定で関連部品のサーフェス形状を交換するだけで、複数の形状バリエーション(ダクトのシミュレーションにおけるさまざまなミキシング・フラップの位置など)を最小限の労力で評価できます。

HVACユニットおよび配風システムのためのSIMULIAソリューションには、以下のようなメリットがあります。

  • PowerFLOWでは形状のわずかな違いによるフローの変化を取り込むことができるため、有意義な設計評価を行い、流れの分配を改善することができる。
  • ファンやブロワファンなどの回転形状は、スライディング・メッシュまたはマルチ参照フレーム(MRF)でシミュレーションされる。
  • 3つの熱伝達モード(対流、伝導、ふく射)すべてを含む熱解析に対応している。
  • PowerFLOWとPowerTHERMの間の完全に自動化された2方向の連成プロセスにより、包括的な熱伝達解析を実行できる。

ふく射効果が重要ではない場合は、熱解析にPowerFLOWのみを使用し、適切な壁面境界条件(熱抵抗など)を組み合わせることで、低コストの代替手法とすることができます。