PowerFLOW:HVACシステムとブロワファンの騒音

 

対象の業界:自動車、商用車、オフハイウェイ機器、鉄道車両

 

車両メーカーが車室内の騒音レベルの低下を目指す中、暖房、換気、空調(HVAC)システムによる騒音の削減が、音響性能を改善するための目標となっています。HVACシステムは複雑で、ブロワファンと多数のダクトにつながった混合ユニットから構成されています。空気はこれらのダクトを通り、運転席、助手席、後部座席の乗客の顔や足元などのさまざまな場所に運ばれます。また、フロントガラスやサイドガラスのデフロストにも利用されます。ブロワファンは、温度快適性設定ごとに望ましいエアフロー・レートを達成するために十分な圧力を生み出す必要があります。騒音はブロワファンの回転と混合ユニット内の空気の乱流から生まれ、曲がりくねったダクトを通り、レジスター(換気出口)から出ていきます。HVACシステムの設計においては、騒音目標を達成できるかどうかを予測し、複数領域での性能の最適化を実現することが困難です。流れ性能、熱性能、音響性能のいずれについて妥協しても、後になって設計変更が発生するか、乗客の快適性が低下するだけです。HVACシステムを車両に統合した場合も、テスト・ベンチに応じて性能が変わることになり、結局は性能が低下して後から設計変更が生じるおそれがあります。

技術面での課題

HVACシステムが原因で乗客が耳にする騒音には、多数の原因と経路があります。ブロワファンは、動いている翼と周囲の空気の相互作用と、近くの動かない構成部品に対する動いている空気の衝撃から騒音を生み出す放射状ファンです。このファンの騒音は、複雑なダクト網全体に音響として伝播され、レジスターから車室内に入り込みます。ダクトと混合ユニットのエアフローの騒音源は主に、詳細な形状フィーチャーを通り過ぎるエアフローから発生する流れの分離と渦です。また、この騒音源はシステム全体に音響として伝播されます。レジスターを出る流れによる騒音は、グリルの詳細な形状と向き、そして周囲の空気と混ざり合い、固体サーフェスに影響を与える(フロントガラスのデフロストなど)排出ジェットによって異なります。このため、流体音響を数値で予測するための要件は厳しく、非常に複雑な形状、ファンおよび流れによる騒音源の予測、システムから車室内までの音響の伝播にも対処しなければなりません。空力音響の分野では、ファン騒音の正確な予測が大きな、未解決の問題となっています。

SIMULIAソリューション

PowerFLOWは、複雑な自動車HVACシステムの騒音を数値的に正確に予測できる唯一のソリューションです。PowerFLOW独自のテクノロジーである、本質的に非定常なソリューションが、統合システム全体に及ぶ形状の詳細の効果を含む、複雑な流れ構造、対応する騒音源、乗客の頭部スペースに伝播される音響を正確に予測します。非定常流れの特性および音響は、回転ファンの流れと騒音を含め、PowerFLOWソルバー内で直接、完全にシミュレーションされます(回転形状機能を使用)。また、別のソルバーと連成せずに、システム全体への音響の伝播を直接予測できます。PowerFLOWにより、提案された設計の音響を初期段階で評価し、考え得る設計オプションを評価できます。また、既存の設計の騒音問題を診断して改善できます。使いやすい解析および視覚化機能(PowerACOUSTICSおよびPowerVIZを使用)を使用し、騒音源を特定して詳細を把握できます。これには周波数帯でフィルターを適用できる圧力解析が含まれ、特定の周波数帯で発生する現象を特定できます。車内の予測スペクトルをオーディオ・ファイルに変換し、さまざまな設計オプションの効果を聞いて比べることもできます。複雑な形状処理と効果的な後処理によりターンアラウンド時間を短縮できるため、設計の評価と改善が可能になります。PowerFLOWはHVACシステムの圧力、フロー・レート、熱混合挙動を正確に示すことができるため、複数領域に及ぶ設計のトレードオフの評価に使用できます。これらの機能により、単一のモデルを使用して、最適な空力性能、熱性能、音響性能を持ったHVACシステムを設計できます。