サンルーフ及びウィンドウのバフェティング向けPowerFLOW

 

サンルーフ及びウィンドウのバフェティングをシミュレーション

 

自動車のOEMは、快適な乗り心地を実現するため、騒音源の削減に多くの労力と費用を費やしています。最近実施されたJ.D.Power社の調査によって、車両の品質に対する消費者の評価に、風切り音が大きく影響することが明らかになっています。風切り音に関する苦情の中でも、サンルーフやサイド・ウインドウを開けた時のバフェティングに対する不満がとりわけ多くなっています。バフェティング(またはウインド・スロッブ)とは、気流による車室内のヘルムホルツ共鳴によって生じる、高振幅で低周波の不快な低音です。空洞(サンルーフまたはサイド・ウインドウ)上のせん断層における渦流出と車室内の音響が連成することで、せん断層と車室内圧力の自励振動を引き起こします。一般的に、試作品は実際の空力と音響を再現できるほど精巧に作られないため、OEMが開発の初期段階でバフェティングを評価することはありません。そこで、全車両のバフェティングを抑制することを目的とした汎用サンルーフシステムを設計するという対策が取られています。しかし、実験による最適化プロセスでは、開発プロセスの後半でサンルーフシステムを調整することになったり、多額の費用をかけて設計を変更したりするだけでなく、最善ではない設計になってしまうこともあります。そのため、設計の初期段階でバフェティング現象の数値予測を行い、設計の指針を定めることが強く求められます。

技術面での課題

車両のバフェティング現象を正確に予測するためには、非定常のせん断層の空力現象(渦流出)と車室内の音響応答の相互作用を捉える必要があります。気流によって励起される共鳴の正確な定量的予測には、せん断層を通過する複雑な非定常の挙動(乱流渦の形成、剥離、渦対流など)を正確に予測しなければなりません。また、音響の相互作用を直接捉えるためには、圧縮性ソルバーが必要となり、車室内の音響応答も正確にモデリングすることが求められます。さらに、形状のわずかな違いがせん断層や音響の連成に大きく影響するため、細部まで再現された形状を高い精度で解析することが求められます。こうした問題により、車両のバフェティングのシミュレーションは容易ではありません。特定の車両設計に対する重大性(ピーク・レベル)や、さまざまなバフェティング抑制対策の有効性を予測するのは特に困難です。

SIMULIAソリューション

PowerFLOWは、外部の流動力学と車室内の音響を連成させることが可能なため、サンルーフやサイド・ウインドウの開口部からのバフェティング挙動を正確に予測できます。室内の音響応答のモデリングを含むこの機能により、オンセット/オフセットの速度とピーク・レベルを含むバフェティングの重大性を、潜在的な設計解が最も多く存在する開発プロセスの初期段階で評価できます。本質的に非定常で圧縮性を備えたPowerFLOW独自のテクノロジーは、複雑な流動構造を正確に予測します。サンルーフやウィンドウで発生する渦流出挙動を視覚化することで、サンルーフのディフレクタの形状や位置に関する詳細など、設計改善に向けた有益な情報を確認できます。PowerFLOWでは、バーチャル・テスト環境を活用し、車両開発サイクルの初期段階からすべてのフェーズでバフェティング挙動を予測し、設計改善の可能性をテストすることが可能です。