車室内の風切り音向けPowerFLOW

 

風切り音のインサイドストーリ

 

車室内の騒音レベルを抑え快適な乗り心地を実現することは、音響エンジニアの重要な仕事であり、製品の売上やブランド・ロイヤルティにも直接影響を与えます。パワートレインや路面/タイヤの騒音はすでに大きく低減されているため、高速走行中の主な騒音源となっているのは風切り音です。そのため、車室内の騒音抑制目標を達成し、品質面で競争力を維持するために、膨大なエンジニアリング時間と製造コストが費やされています。一般的にOEMは、開発プロセスの後半、つまり高品質の検証用試作品が作成される段階まで、風切り音による車室内の騒音を評価することができません。この時点で評価を行うと、騒音の問題を効率的に解決するには手遅れとなる可能性があります。設計の手戻り、サウンド・パッケージの追加、ガラスによる遮音などの対策が必要となりますが、こうした対策はすべて時間も費用もかかります。開発期間だけでなく関連コストも削減するためには、開発プロセスの初期段階だけでなくプログラムのライフサイクル全体で使用できる信頼性の高い数値予測機能が強く求められます。

技術面での課題

高速走行する場合、乱流によって車室のさまざまなパネル(サイド・ウインドウやフロントガラスなど)に分散力が生じ、各パネルに影響を与える音場が発生します。車室の騒音源は、カウル、Aピラー、ミラー・アセンブリーなど、さまざまな外部の形状特性から生じる流れのはく離と渦による複雑な非定常流構造です。車室の騒音源を正確に予測するには、小さな形状の影響を含め、車室パネルで発生し時間で変化する流動構造とその結果生じる壁圧変動を予測する必要があります。乱流励起、パネル振動、音響は、広範囲な長さスケール (波数スペクトル)で発生するため、重要な周波数帯で正確な予測を出すことは技術的に非常に難しい問題です。外部音場の内部への音響伝播は、音響/構造コインシデンス周波数付近で特に重要です。また、乱流壁圧力振幅が音圧の振幅をはるかに超過した場合でも重要になる可能性があります。

SIMULIAソリューション

PowerFLOWとPowerACOUSTICSを組み合わせることで、風切り音の重要な騒音源をすべてシミュレーションできます。またそれらが原因の車室内騒音も予測できます。PowerFLOWでは、騒音を発生する主な流動構造(フロントサイド・ガラスに直接影響を与えるAピラー付近の渦やミラー/ペデスタル/セイル・ウェイクなど)の正確な予測を含め、車両周りの非定常流を予測できます。PowerACOUSTICSは、パネル上のあらゆる場所で発生する時間領域の圧力信号を構造的な電気入力に変換します。これは、車室騒音を予測する高速統計的エネルギー解析(SEA)モデルへの入力値として使用されます。このアプローチでは、車内の運転席や助手席のヘッド・スペースにあるさまざまなパネルから発生する風切り音の影響を定量化します。予測されたスペクトルは、音声ファイルに変換できるため、さまざまな設計オプションの効果を比較試聴できます。PowerFLOW製品群の完全なソリューションは、物理テストで得る実用的なデータ以上の結果を提供します。主な乱流構造の挙動とそれに対応する車室騒音源に関する情報を確認できるため、目標とする形状設計に改良することが可能です。業界初のこの機能により、高価な物理モデルや試作品を作る前の開発プロセスの初期段階で、潜在的な騒音抑制ソリューション(外形の変更、ガラス特性、車室内の音響パッケージの変更など)を解析できます。