PowerFLOW:冷却ファンの騒音

 

業界が必要としている静かな革命

 

特に車両の速度が遅い場合や車両がアイドル状態の場合に、熱交換器を介して十分なエアフローを確保することによってエンジンの温度を管理できるように、低速の回転軸流ラジアル・ファンが頻繁に使用されています。こうしたファンの望ましくない副作用として、流れによる騒音の発生が挙げられます。これは、運転者と乗客にとってやっかいなものであるだけでなく、特に商用車や重機の場合は都市騒音の発生源になります。ほとんどの場合、そして特に質量流量の高い構成の場合、冷却ファンが騒音全般の主な要因となっています。状況によっては、エンジン、トランスミッション、タイヤ、機械部品、排気といった他の要因よりも支配的です。

政府は事業体および自治体に対して騒音に関する規制を課しており、製品の音響開発を怠った場合、こうした要件に準拠するために遅延が発生したり、コストのかかる対策を講じる必要性が生じたりします。さらに冷却ファン騒音は、ブランドのイメージや顧客の満足度に影響を与えるおそれのある品質問題として認識されています。競争の激しいこれらの市場における規制や音響の快適性に関する重要性の高まりを考慮すると、製品開発のできるだけ早い段階で冷却ファンの流れによる騒音問題に対処することには大きな価値があります。

技術面での課題

ファンの音響性能の試験評価には、物理テストの難しさによる制限があり、通常はスタンドアロンのテスト・ベンチ構成で実行されます。この手法では流れとファンの音響環境を大きく変える傾向があるため、実際のシステムに統合された際に、結果と性能の間に十分な関係性がないこともあります。物理テストでは、騒音源を特定することは非常に難しいか、不可能です。シミュレーションによりこうした困難を克服できる可能性もありますが、冷却ファンからの流れによる騒音に関連する以下のような主要な物理メカニズムを正確に取り込むという課題に対処しなければなりません。

  • 本質的に非定常の現象である騒音発生。従来のCFDでは一般的に、妥当な時間フレームで非定常の影響を正確に予測することは困難です。
  • 回転翼とその近くにある定常形状との複雑な相互作用が主な騒音源。通常の移動参照フレーム(MRF)手法ではこの効果を取り込むことはできません。
  • トーン騒音。特に翼通過周波数と関連している場合、入ってくる流れの質、ローター・ケーシングの相互作用、旋回失速条件の存在、流れ場の不安定性に大きく依存します。
  • 広帯域騒音。通常、渦流出、流れの分離、乱流境界層騒音、翼端渦騒音に関連しています。
  • 設置の効果。吸気口の流れの状態とシステムの音響反応に影響する傾向があります。
  • 近くの対流場の外側での、小さな振幅圧力変動(音響)の放射。

 

SIMULIAソリューション

PowerFLOWとPowerACOUSTICSを組み合わせることで、総合的な空力音響計算ソリューションとなります。

  • PowerFLOWの本質的に非定常なソリューションが、複雑な時間依存乱流構造と、冷却ファンによって発生する騒音源を正確に予測します。
  • PowerFLOWが備える回転形状機能が、正確なタイミングで回転シミュレーションを実行し、従来のMRF手法よりも精密にあらゆるタイプの相互作用を取り込みます。
  • PowerFLOWの本質的に圧縮性のあるソリューションが、流れによる騒音源と同時に放射騒音を予測します。
  • PowerFLOWは詳細な形状に対処し、ファンと周囲の構成部品の間のあらゆる相互作用を取り込むことができます。
  • 遠方場への騒音(環境騒音)の伝播を予測する必要がある場合、PowerFLOWの非定常の結果を、Ffowcs-Williams and Hawkingsの式に基づく音響アナロジー手法を使用するPowerACOUSTICSの遠方場騒音モジュールと組み合わせます。
  • PowerACOUSTICSとPowerVIZの使いやすい解析機能と最新の3次元視覚化機能により、騒音源を把握できます。周波数帯でフィルターを適用できる圧力解析を使用して、特定の周波数帯で発生する現象を特定することができます(翼通過周波数騒音の詳細な調査を実行する場合など)。