Jamco

没入型のバーチャルツイン体験が、ジャムコの顧客との協業と設計検証を革新。

バーチャルで航空機内装を体験する、新しいアプローチ

民間航空機に搭乗されたことがあれば、ジャムコの製品に触れている可能性は高いでしょう。ジャムコは、航空機内装品の世界的リーディングカンパニーとして、航空機メーカーや航空会社向けに、カスタマイズされたラバトリー、ギャレー、航空機シートを提供しています。しかし最近まで、こうした製品を市場に投入するまでのプロセスは複雑なものでした。従来の方法では、航空会社からは先進的な内装コンセプトやデザインイメージが提示され、それに基づき、ジャムコのようなサプライヤーが具体的な設計・エンジニアリングを担ってきました。物理モックアップによるプロトタイプと最終製品の間に差異が生じることもあり、その結果、設計の最終段階での変更やレビューの繰り返し、リードタイムの長期化を招いていました。

こうした課題に対し、ジャムコは開発プロセスをバーチャル空間で完結させる新たなアプローチを導入しました。同社の「バーチャル・イノベーション・スタジオ」では、航空機エンジニアと顧客が、実物大のキャビン空間を仮想環境内で体験することができます。最新鋭のバーチャルリアリティ(VR)空間では、壁や床に高精度な3Dモックアップが投影され、ユーザーはまるで本物の航空機内にいるかのような没入感を得ることが可能です。物理的な部品に一切触れることなく、ハンドルに手を伸ばし、仕上げを確認し、レイアウトの動線を検証することができます。

「バーチャル・イノベーション・スタジオでは、プロジェクション型のCAVEシステムがメインです。このシステムの利点は、自分の身体がバーチャル世界に融合して、より現実に近い形で認識できることです。これにより、お客様によりリアルな体験を提供して、より具体的なフィードバックをいただけると考えています。」と、株式会社ジャムコ、技術イノベーションセンター 次長の桜井浩氏は語ります。

ジャムコのCAVEシステムを支えているのが、ダッソー・システムズが提供する「Commercial Virtual Twin as a Service(VTaaS)」です。オンライン上ですぐに利用できる状態で提供されるこのソリューションにより、ジャムコは没入型の3D体験を実現するとともに、エンジニアリングレベルのシミュレーションを実行し、製品設計をより早期に検証することが可能になりました。意思決定の迅速化や、開発プロセス全体における手戻りの削減にも大きく貢献しています。

3D設計データを“資産”として最大限に活用する

ジャムコが進めるバーチャル開発への取り組みは、20年以上にわたるデジタル設計の実績に基づいています。「20年以上にわたり、ダッソー・システムズのCATIAをコンピュータ支援設計(CAD)ツールとして活用してきました。ただし、これまでは主に製図のためのツールとして使用してきた側面が大きく、私たちが日々多くの時間と労力をかけて作成している3Dデータを、もっと有効に活用できないかと考えるようになったのです。現在では、高精度な3Dモデルをバーチャルツインとして活用し、製品開発全体の“唯一の正(シングルソース・オブ・トゥルース)”とすることに挑戦しています。」と桜井氏は述べます。

Commercial VTaaSは、サブスクリプションベースで提供される、完全管理型のクラウドソリューションです。CATIA、SOLIDWORKSENOVIA3DEXCITEといったダッソー・システムズの信頼性の高いエンジニアリング、シミュレーション、データ管理ソリューションに、同社の先進的なビジュアライゼーション技術を統合し、すぐに利用できる仮想環境として提供されます。

ジャムコのような企業にとって、これはより迅速かつ低リスクで価値を引き出す手段となります。専門チームを組成したり、ITインフラを構築したり、新たなデジタル戦略を策定したりする必要はありません。その代わりに、あらかじめ自社のニーズに合わせて調整され、常時利用可能で、専門家によって保守・運用されるソリューションを、タイムリーに受け取ることができます。すべてを自社で構築・運用する場合に発生するような初期投資やリスク、遅延を回避しながら、実際のビジネス成果を支える準備が整っているのです。

「データ互換性の観点からも、ダッソー・システムズの製品を引き続き活用することは非常に合理的です」と桜井氏は述べます。「3DEXCITEのエンジニアチームは、コンテンツ制作における高い専門性と技術力を兼ね備えており、我々が求めていた品質をスピーディに形にしてくれました。彼らの支援は本当に心強いものでした。」

今では、バーチャルツインを通じて、顧客とのやり取りがより没入感のある、双方向的な体験に変わりました。製品が完成する前に、見た目・使い勝手・機能性をリアルに体感いただけるため、理解の深まりがまったく違います。

桜井浩氏

株式会社ジャムコ 技術イノベーションセンター 次長

航空機メーカーとの対話型コラボレーションとレビューを実現

民間航空機においては、ラバトリーの取っ手の位置からギャレーの壁材の質感、座席と隔壁の距離に至るまで、あらゆるディテールが重要です。現在では、ジャムコとその顧客は、こうした細部を物理的な試作に入る前の段階から、「バーチャル・イノベーション・スタジオ」で実物大スケールで検討できるようになっています。素材の仕上げやレイアウトの選択も、早い段階で評価できるようになりました。

たとえば、航空会社のブランドカラーに合わせて色を変更したり、収納スペースのサイズを調整したりといった修正も、数秒で反映され、その場で即座に確認可能です。ジャムコの設計チームは、もはや物理プロトタイプや外部委託のモックアップを待つことなく、設計の妥当性を検証できます。仮に設計上の問題があっても、製造に入る前の段階で発見できるため、開発スピードが向上し、従来発生していた後工程での課題やコスト増を未然に防ぐことができます。

「当社の製品の多くは、お客様ごとの仕様に合わせた受注生産です。これまでは、製造がすでに始まっている段階でも変更のご要望をいただくことがありました。こうしたことは、どのような開発プロセスにおいても珍しくないことです。しかし今では、バーチャルツインによって設計段階で早期にレビューと承認が可能になりました。これにより、後工程での手戻りが減り、リードタイムの短縮や製造の効率化につながっています。」と桜井氏は語ります。

ジャムコのバーチャルツイン体験は、社内の業務効率化にとどまらず、顧客との予備設計レビューや重要設計レビュー(CDR)のあり方にも大きな変革をもたらしています。設計プロセスのあらゆる段階で、顧客がより深く関与し、的確なフィードバックを行えるようになったことで、協業性・直感性・生産性のすべてが向上しています。

「従来は、2D図面や画面上の3Dモデルを用いて何度もやり取りを重ねるか、コストのかかる物理モックアップを製作して確認するしかありませんでした」と、ジャムコ 技術イノベーションセンター 次長の桜井浩氏は振り返ります。「しかし今では、バーチャルツインを通じて、顧客とのやり取りがより没入感のある、双方向的な体験に変わりました。製品が完成する前に、見た目・使い勝手・機能性をリアルに体感いただけるため、理解の深まりがまったく違います。」と、桜井氏は振り返ります。

ジャムコは現在、このバーチャルツインのアプローチを、プリセールスおよびアフターセールスの領域にも拡張できる可能性を模索しています。バーチャル・イノベーション・スタジオでは、リアルな航空機内の環境下で製品を紹介することが可能で、顧客に対して投資対象となる製品の具体的なイメージを、より明確に伝える手段として活用が期待されています。また、製品が運用段階に入った後には、バーチャルツイン・モデルが保守・修理を支援するツールとして活躍する可能性もあります。こうしたアフターセールス対応の高度化を見据え、ダッソー・システムズはジャムコと連携し、バーチャルツインを顧客向けのサービスパッケージの一部として、どのように維持・提供していくかを共同で検討しています。

「アフターマーケットにおいては、顧客が製品を正しく理解し、保守や修理手順を習得するために、バーチャルツイン・モデルを提供することが可能です。技術者が修理前に必要な部品を視覚的に確認することで、作業時間の短縮にもつながると期待しています。」と桜井氏は述べます。

リアルな航空機内の環境下で製品を紹介するだけでなく、バーチャル・イノベーション・スタジオは、さまざまな文脈で活用できます。

人材育成とスキル継承にも広がる可能性

桜井氏は、ジャムコのバーチャル環境が従業員教育やスキル開発の中核的なリソースになり得ると考えています。グローバルな製造バリューチェーンの中で事業を展開する同社にとって、こうした活用は今後ますます重要になります。

高精度なものづくりを強みとし、顧客ごとの高度にカスタマイズされた設計を提供しているジャムコにとって、若手人材の育成と社内スキルの継承は不可欠な取り組みです。これまで物理的な部品や現場での実演を必要としていた教育が、いまや遠隔でも可能になりつつあります。

「バーチャル・イノベーション・スタジオは、さまざまな文脈で活用できます。教育の場面では、新入社員が実際に操作するような感覚で学べます。当社の主な生産拠点は新潟にありますが、宮崎やフィリピンにも工場があります。生産拠点が変わっても、ナレッジをバーチャルで共有できるのです。以前は、現地に行くか、生産開始を待たなければトレーニングできませんでしたが、今では事前に準備できるようになり、教育の効率性と柔軟性が大きく向上しました。」と桜井氏は述べます。

プリセールスから設計、製造、アフターサポートに至るまで、製品ライフサイクル全体で同じデータをシームレスに活用できる――このような取り組みを可能にしているのが、ダッソー・システムズとの協業なのです。

桜井浩氏

株式会社ジャムコ 技術イノベーションセンター 次長

持続可能な航空機内装の未来を切り拓く

設計・レビュー工程のバーチャル化が進む中で、ジャムコは業務のスマート化とサステナビリティ目標の達成に向けた新たな可能性を見出しています。特に、試作や輸送の回数を減らすことで、資材の使用量を削減し、廃棄物を抑制し、環境負荷の低減に貢献しています。

「バーチャルツインの活用が進めば、物理モックアップへの依存はさらに減っていくと考えています。それによって製造コストや輸送コストが削減され、CO₂排出量の低減にもつながると期待しています。」と、桜井浩氏は述べます。

こうした取り組みの根底には、航空宇宙業界における継続的なイノベーションへの取り組み、そしてダッソー・システムズとの強固なパートナーシップがあります。航空機メーカーが、より高度にカスタマイズされた内装、短納期対応、そしてサステナブルなソリューションを求める中、ジャムコの「バーチャル・イノベーション・スタジオ」は、これらのニーズに的確に応える手段となっています。

「私たちジャムコは、“技術のジャムコ”としての自負を持ち、常に新たな領域に挑戦し続けています。」と、桜井浩氏は語ります。「プリセールスから設計、製造、アフターサポートに至るまで、製品ライフサイクル全体で同じデータをシームレスに活用できる――このような取り組みを可能にしているのが、ダッソー・システムズとの協業なのです。」

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株式会社ジャムコについて

「技術のジャムコは、士魂の気概をもって」の理念を基に、同社は「航空機内装品製造事業」、「航空機シート製造事業」、「航空機器製造事業」「航空機整備事業」の4つの事業を柱として、それぞれの領域・分野で「ナンバーワン」を常に目指しています。この強固な基盤の上に構築された同社は、世界中の乗客の安全で快適な空の旅をサポートしています。

詳細情報www.jamco.co.jp/ja