世界人口は、2050年までに100億人に増加すると予測されており、食糧需要は70%の増加に至ります。しかしながら農業用地は不足している状況です。このような状況の中で、東京の経験豊富なエンジニアのチームが結集し、農業技術(アグリテック)のスタートアップ企業、プランテックスを設立しました。持続可能な食料供給と、従来以上に安全で健康的な食生活を、植物工場を通じて実現することをミッションとして掲げている企業です。
プランテックスの「Culture Machine」と名付けられた「密閉型」植物工場は、装置単位で密閉されており、従来の植物工場以上の緻密な環境制御ができることを特徴とします。装置内には、高効率なLEDや多数のセンサーなどが搭載されています。こうした構成により、栽培環境に対する正確な制御が可能となり、安定的に再現性の高い栽培が可能になります。複数の植物種に対してそれぞれ個別に最適な環境を設定することも可能となり、非常に効率のよい持続可能な食物生産の方法となっています。
プランテックスの設立者たちは、創業時から、高度なプロセス制御システムなど、多くの製造テクノロジーを駆使しています。現在は、自社のCulture Machineのエンジニアリングと運用を行っており、顧客に対して独自の植物工場を実現するための計画策定、設計、運用の支援も提供しています。
プランテックスのビジネス規模の拡大に伴い、取り扱う装置やデータの規模も拡大しました。既存のシステムでは1万点を超える部品から成る複雑な組立の管理を適切に対処するのが難しくなり、プランテックスのエンジニアチームは、今後チームとして効率的に協力して働くために別のソリューションが必要であると考え、信頼性、トレーサビリティ、生産性を向上させるのに役立つエンジニアリング用のコラボレーション環境を探していました。
プランテックスは、機械設計とデータの共有、トレーサビリティの管理に対処するために、ダッソー・システムズのインダストリー・ソリューション・エクスペリエンスである「デジタル・エクイップメント・コンティニュイティ」を3DEXPERIENCEクラウドプラットフォーム上に実装することに決めました。
3DEXPERIENCEプラットフォームのコラボレーティブ・ワークスペースを利用し、プランテックスのエンジニアは協力して、万点単位の部品から構成される自社の革新的なソリューションの完全なデジタル・モックアップを作成できます。部品には、さまざまなセンサーのほか、複雑な配管や照明の部品が含まれます。
弊社は、植物工場の潜在的な可能性を引き出すことで、より美味しく安全で健康的な食を提供し、かつ環境に優しく持続可能で気候変動に対して強靭な食料生産システムを実現していくことを目指しています。そのためには、植物の成長に影響する栽培環境条件を高度に制御するものづくりの技術が重要になります。
3DEXPERIENCEクラウドプラットフォームによって、複数のエンジニアが情報を共有して無駄なく製品を開発できることを期待しております。
3DEXPERIENCEプラットフォームの導入により、プランテックスは設計とエンジニアリングをつなぐ単一のソリューションを持つことになります。CATIAを使用すると、エンジニアは効果的かつ効率的に一緒に作業し、より効果的にコラボレーションを行いながら複雑なアセンブリを容易に扱うことができます。
変更管理プロセスが改善されたことで、すべての変更が記録されるために完全なトレーサビリティの実現につながりました。同時に、BOM管理の向上によって、製品エンジニアが完全で正確な最新の部品表を作成して維持できるようになり、プランテックスが求めていた信頼性、トレーサビリティ、生産性のメリットが実現されています。
こうした最適化により、同社が将来アグリテックにおいて成功を収める下地が作られました。必要に応じてアプリやオンラインサービスの拡張とアクセスが可能であるため、プランテックスは、3DEXPERIENCEプラットフォームの高度なモデリング機能を採用し、デジタル環境におけるCulture Machineの温度、水の流れ、空気の流れ等のさらなる改善を図ります。
プランテックスは、地球上の食物生産に関連する研究開発を促進するための構想であるSpace Foodsphereプログラムに参画し、月面での長期滞在を支援するための高度なリソースリサイクル式食料供給システムを開発するプロジェクトを実施しており、その中でも3DEXPERIENCEプラットフォームが活用されています。
プランテックスは、高度なものづくり技術によって植物工場の潜在的な可能性を引き出すことに挑戦しています。同社は温度、湿度、二酸化炭素濃度などの栽培環境条件や、光合成速度、吸水速度なども加味して作物の成長を精密に制御できる密閉型栽培装置を独自に開発しました。これによって従来の植物工場が抱えていた、投資コストに対する生産性の低さ、連続稼働時の生産量の不安定さ、多品種栽培への対応力の低さといった問題を一挙に解決することができます。
プランテックスの技術により、天候の影響を受けない周年安定栽培や、地産地消型生産システムといった価値をもった植物工場を広く普及させていくことができます。