パナソニック株式会社 ホームアプライアンス社 様

CATIAにより開発リードタイムの大幅削減を実現

私たちは、すべての部品を3D化したうえで、設計者全員が同一アセンブリー上で設計作業を行うことを目指しました。」

Yasushi Morimoto
森本 泰史 氏
パナソニック株式会社 ホームアプライアンス社 キッチンアプライアンスビジネスユニットチームリーダー

Panasonic

パナソニック株式会社 ホームアプライアンス社は、冷蔵庫、洗濯機、炊飯器などの家庭電化製品(白物家電)に特化したヒジネスを展開しています。同社のキッチンアプライアンスビジネスユニット(キッチンアプライアンスBU)では、IHクッキングヒーターやその他の調理器の製造・販売を手がけています。電気を使うIHクッキングヒーターは、クリーン&エコに貢献することから近年その人気が高まりつつあります。

PLMにより開発リードタイムを短縮

2000年以降、IHクッキングヒーターの需要は堅調に伸びています。新しい競合メーカーの急速な市場参入に伴い、パナソニックは、プロダクト・ライフサイクル・マネジメント(PLM)技術を積極的に導入しています。顧客が求める製品バリエーションが広がる中で、パナソニックは、競争力を維持するには継続的に製品の機能と品質が向上していることを市場に示す必要がありました。
また、コストダウン、開発人員の抑制、および開発リードタイムの短縮も重要な課題となっています。

キッチンアプライアンスBUのチームリーダー 森本泰史氏は「従来は2年おきに新製品を発売していましたが、競争の激化により年々リリースサイクルが短くなり、現在では1年おきに新製品を発表している状況です」と、IH 市場の現状を明らかにします。

3Dに基づいた体制の確立

キッチンアプライアンスBUの設計チームは2000年に 3Dツールを採用し、社内のデザイン、機構設計、回路設計、試作の各部門間で設計データを効率的に連携することで設計品質を向上させ、リードタイムの短縮を試みました。

パナソニックのデザイン部門と機構設計部門の間では、CATIAのデータをやり取りすることでデータ変換の手間を省き、引継工数を大幅に削減するとともに意匠データの信頼性を向上させました。コンカレント設計のアプローチによって設計品質が向上し、再加工作業が減少します。 また、CATIAが生成する3D設計データは、造形型機に転送されて試作部品が作製されます。その結果、従来のNC加工機による削り出しと比べて試作部品の作製リードタイムが半減し、手作業による再加工がなくなり、試作部品の精度と信頼性が向上しました。

3D使用の拡大

社内の3D化はすでに2002年に完了していましたが、樹脂金型メーカーや板金金型メーカーはまだ2Dの図面を渡している状況でした。2D図面を排除するために、パナソニックの設計部門と工場部門、および金型メーカーは正式図面を全面的に3D化することに合意しました。

結果として、最終的に金型・ものづくり要件への早期対応と、図面作成工数の削減が実現しました。金型作製のための2D図面作成が不要になったことで、パナソニックは金型作製時間を大幅に短縮し、図面作成工数を削減しました。

ものづくりの要件への対応をさらに効率化するために、パナソニックは2004年に設計以外の部門への CATIA導入を開始しました。今では、技術部門や組み立て製造部門は、設計途中のデータを現場で見ながらものづくりの要件、金型要件、組み立て性の評価を実施し、その結果を設計者にフィードバックしています。「設計者は設計に集中したい時にも随時フィードバックが来ることで煩わしさを感じることもありますが、試作品が完成した後からものづくりの評価を実行実行することで生ずる誤りが少なくなり、より早い段階から設計完成度が高まる効果をもたらしました(」森本氏)。

同じく2004年に、パナソニックはCATIAアナリシスを使用して、設計初期段階で製品強度などの要素を検証し始めました。シミュレーションの結果を、実際の製品の試験結果との相関を検証しながら積み重ねていく事で応力のしきい値を設定し、設計仕様に反映させます。

また、サービスマン向けのテクニカルガイド作成にも 3Dを活用しています。CATIAを導入する前は、イラスト制作会社に現物の部品を渡し、制作会社の担当者が技術図面を作成していました。そのため、その製品が発売になるまでにテクニカルガイドが完成することはありませんでした。ところが、3Dデータを活用することでイラスト作成時間の短縮が実現し、今では製品出荷のはるか前にテクニカルガイドが完成するようになりました。

使いやすさと製造上の利点が成果を上げる

パナソニックの設計者はCATIAの学びやすさを認識しており、導入教育はOJTが基本となっています。 CATIAアナリシスについては、2回の事前講習、自習と OJTによってスキルを向上させていきます。今では、機構設計者の100%がCATIAを、70%がCATIAアナリシスを活用しているため、設計の品質が向上しています。


PLMを導入したことによるもう1つの明確かつ定量的な利点は、試作品作成におけるリードタイムの短縮です。樹脂部品については3D設計と造型機の導入で試作品作成にかかるリードタイムを90%削減することができました。板金部品についてもCATIAシートメタルの導入で図面展開に要する時間が短縮されました。

金型作成にかかる時間も3Dデータを使用して40%削減することができました。また、応力試験の結果が金型の作成前に確認できるようになり、設計完成度が大幅に向上しています。

将来の展望

「今後はグローバル展開と環境改善、さらなる機能アップやコストダウンが必要で、コンカレントエンジニアリングなくして事業の拡大は困難です」と森本氏は語ります。

そこでパナソニックは、グローバル対応や環境対応、さらに部門間のさらなる連携強化のためにENOVIA の導入を検討しています。また、DELMIAによる組み立て評価、工場との連携強化、さらにCAE活用人員を増やしてCAE活用範囲の更なる拡大を図っていく構想を描いています。「PLMへの取り組みでコンカレントエンジニアリングを推進することにより、新たなものづくりのパラダイムをパナソニックに確立し、世界中の人々の生活を豊かにします」と森本氏は述べています。
 

「PLMへの取り組みでコンカレントエンジニアリングを推進することにより、新たなものづくりのパラダイムをパナソニックに確立し、世界中の人々の生活を豊かにします。」

Yasushi Morimoto
森本 泰史 氏
パナソニック株式会社 ホームアプライアンス社 キッチンアプライアンスビジネスユニットチームリーダー