アシックス

日本のスポーツブランドであるアシックスは、パーソナライゼーション・サービスの基盤として、インダストリー・ソリューションである「Perfect Consumer Product」と「Perfect Product Staging」を活用しています。3DEXPERIENCEプラットフォーム・オン・ザ・クラウドによって、アシックスは普段お客様が見る機会のない製品の部分を紹介することができ、消費者は十分な情報を得た上で購入の意思決定を行うことができます。

パーソナライズされたシューズを全てのお客様に

遠くない将来、アシックスの店舗に足を運べば、自分の足にぴったり合ったシューズを購入できるようになるでしょう。これは、デジタル、パーソナル、サステナブルな製品づくりを通して、人々の健康でアクティブな生活を支えるというアシックスの長期的なビジョン の一つです。鬼塚喜八郎は、身体を動かすことが精神的な幸福をもたらすという信念のもとにアシックスを創業しました。最初のイノベーションのひとつは、バスケットボールシューズの吸着盤型のソールで、コート上でのグリップ力を高めました。また、マラソンランナーのシューズにエアーベントシステムを導入することで、通気性を高め、熱を排出し、マメの発生を最小限に抑えること に成功しました。

アシックスのものづくりは、ヒューマンセントリックサイエンス(人間中心の科学) に基づいて設計されています。これは、ユーザーの身体や動きの特徴をあらゆる観点から詳細に分析することで要求特性を抽出し、コンピュータシミュレーションを通じた構造設計と材料設計を行い、最終的にアスリートが着用した機能評価を実施することにより、要求水準を満たした製品を世の中に送り出すというものです。

最近では、マス・パーソナライゼーションの可能性を追求しています。プロのアスリート向けに個別最適化されたシューズを提供するだけでなく、それと同じレベルのサービスをより広範な一般ユーザーに向けて提供することを目指しています。

「誰一人として同じ形の足の人 はいません」と、アシックス スポーツ工学研究所 フューチャークリエーション部 グリーンマニュファクチャリング研究チーム 主任研究員の波多野元貴氏は述べます。「さまざまなスポーツにおける多様な顧客ニーズは、私たちの製品づくりを真にパーソナライズされたものに変えていくことを求めています。高機能ランニングシューズモデルには、すでに多くのバリエーションがあります。そして今、すべてのお客様に新たなレベルで快適で心も体も満たされる製品 を提供するために、足の裏側をサポートするフットベッド、カスタマイズ可能なシューズコンポーネントなど、より多くのカスタマイズオプションを検討しています」

研究開発の一環として、アシックスはダッソー・システムズと新たなパーソナライゼーションのサービスの創出に取り組んでいます 。アシックスが2021年に原宿で開設した期間限定の体験型施設、ASICS EXPERIENCE TOKYOでは、パーソナライズされた靴型(ラスト )を作成するコンセプトについて発表しました。このプロセス全体は3DEXPERIENCEプラットフォーム・オン・ザ・クラウドで CATIAを使用して開発・管理が行われました。

CATIAの高度なモデリング機能は、高精度な面を生成し、開発段階から次の段階へシームレスにデータの連続性を保つことができました。CADソリューションを使用することで、アシックスは各顧客に合わせてデザインを迅速かつ簡単に調整することができました。

3DEXPERIENCEプラットフォームは、必要な情報をすべて取り込み、ある段階から次の段階への一貫したデータフローを確保しました

Hatano_ASICS_Dassault Systemes
波多野元貴氏
アシックス スポーツ工学研究所 フューチャークリエーション部グリーンマニュファクチャリング研究チーム 主任研究員

店舗でのパーソナライズに向けて

世界中のアスリートから絶大な支持を得ているアシックスは、ユーザーがより機能的な面でパフォーマンスを向上させる高機能なシューズ の開発で有名です。アシックスの新たなパーソナライゼーションのサービスの目的は、一人ひとり の足の形状、ランニングシーン、好みに合わせて、全てのユーザーのために完璧にフィットするシューズを作り、快適性を高め、怪我のリスクを減らすことです。

3DEXPERIENCEプラットフォームは、2022年にも、東京・原宿にあるアシックスの旗艦店が5周年を迎える記念として 、来場者にパーソナライズされたソックライナーを披露しました。このイベントでは、パーソナライズされたソックライナーのエクスペリエンスをユーザーに提供しました。ユーザーの足を3Dスキャンし、ユーザーごとにパーソナライズされたソックライナーを自動設計し、その3Dデータをバーチャル・エクスペリエンスに変換し、お客様は3つのソックライナーのオプション(「ベストフィット」なオプションと、ソックライナーの用途に応じてクッション性を変えた2つの提案)を視覚的に確認し、選択することができるようにしました。

「極めて短時間で多くの人々にサービスを提供する必要があったため、顧客のデータをアルゴリズムに入力してプロセスを自動化することが不可欠でした」と波多野氏は述べます。「3DEXPERIENCEプラットフォームは、必要な情報をすべて取り込み、ある段階から次の段階への一貫したデータフローを確保しました」

製品ができるまでのプロセスをお客様に楽しんでいただきました。バーチャルの体験は本当に心に響いたようで、実際の製品を手にするだけよりもリッチな体験をしていただけたと思います

ASICS Norihiko Taniguchi > Dassault Systèmes
谷口憲彦氏
アシックススポーツ工学研究所フューチャークリエーション部 部長

インタラクティブで魅力的なユーザーエクスペリエンス

アシックスにとってこのようなサービスは、スポーツのパフォーマンスを高めることができるパーソナライズされた製品 をユーザーに提供する機会であるだけではなく、店頭でエキサイティングかつ新しいユーザーエクスペリエンスを提供する機会でもあります。バーチャルな体験は、単に物理的な製品を試着するだけにとどまらず、顧客が十分な情報を得た上で購入の決断を下したり、普段は気づかない製品 の 部分について理解を深めたりするのに役立ちます 。

アシックススポーツ工学研究所フューチャークリエーション部 部長の谷口憲彦氏は次のように述べています。「私たちは、お客様に提供する体験について真剣に考えました。今回はソックライナー ができるまでのプロセスをお客様に楽しんでいただきました。バーチャルの体験は本当に心に響いたようで、実際の製品を手にするだけよりもリッチな体験をしていただけたと思います。お客様からは多くのポジティブなフィードバックをいただくことができました」

アシックスは、レンダリングツールである3DEXCITEを使用して、ソックライナーの3Dモデルをリアルな形で表現し、ユーザー に見えるようにしました。この明確な視覚的表現は、ユーザーがパーソナライズされたソックライナーがどのように足のサポートを向上させ、製品 を履いた際の快適さを向上させるかをより良く理解するのに役立ちました。

「3Dモデルへのカラーマッピングを使ってユーザーにさまざまなソックライナーのオプションを見ていただくことで、ユーザーが製品の技術的な側面の理解を深め、なぜ特定の形状が自分に合うのかを理解することができました。様々なスタイルを比較し、それが自分の足にどのような影響を与えるかを確認することができました。ユーザーからは、『私はこのオプションの方が好き』『こちらのパーソナライズ版の方が自分に合っている』といったコメントが寄せられました。3Dモデルは、さまざまな製品の特徴を伝え、顧客が購入前に十分な情報を得た上で決断できるようサポートするための貴重なツールだと実感しました」

 
3DEXPERIENCEプラットフォーム上の3DEXCITEにおいて、異なるレベルのクッショニングを持つソックライナーオプションを示しています

パーソナライズされた製品を扱う場合、情報セキュリティは非常に重要です。3Dエクスペリエンス・プラットフォームのクラウド環境なら、データの安全性を確保できます。

ASICS Takashima Shingo > Dassault Systèmes
高島慎吾氏
アシックス スポーツ工学研究所 フューチャークリエーション部バーチャルツイン研究チーム マネージャー

クラウドでシームレスな研究開発

このような新しいパーソナライゼーションやユーザーエクスペリエンスのサービスを始める前から、アシックスは3DEXPERIENCEプラットフォーム・オン・ザ・クラウドが自社のビジネスにとって最適であると認識していました。プロジェクトに関わるチームは、プラットフォーム上であらゆるコミュニケーションを取り、質問の回答を得たり課題を解決したりすることができていました。

「クラウドのプラットフォームは世界中のエンジニアたちとコミュニケーションが取れる仕組みになっていたので、問題の迅速な解決や、スムーズな製品開発に役立ちました。」と、アシックス スポーツ工学研究所 フューチャークリエーション部バーチャルツイン研究 チーム マネージャーの高島慎吾氏は述べます。「パーソナライズされた製品を扱う場合、情報セキュリティは非常に重要です。3Dエクスペリエンス・プラットフォームのクラウド環境なら、データの安全性を確保できます。また、クラウドではソフトウェアが常に最新の機能を備えた状態にアップデートされることもメリットだと思います」

製品開発の全てのデータがクラウドに保存されるので、重要なプロジェクトが順調に進み、世界中に分散したチームが一貫して協力し合うことができます。米国ボストンにあるアシックスのオフィスは、市場調査結果などを踏まえて製品がどうあるべきかを決めている拠点であり、3DEXPERIENCEプラットフォームで開発された最新モデルのレビューを神戸のアシックス スポーツ工学研究所と共に行う試みもしています。 

「たとえば、長距離用のランニングシューズであるゲルカヤノライト(GEL-KAYANO LITE)を開発する際、神戸にいる私たちエンジニアリングチームは3DEXPERIENCEプラットフォームのコミュニティに進捗を投稿していました」と高島氏は述べます。「そしてそれをボストンのチームとレビューし、全ての修正内容をバージョン履歴で把握することができました。3DEXPERIENCEプラットフォームは、全員が同じデータで作業でき、時差を超えて昼夜を問わずプロジェクトを進行できるため、非常に有利でした。効果的なコミュニケーションが可能になり、非常に迅速かつ効率的にまったく新しいものを作成できました」

3DEXPERIENCEプラットフォーム・オン・ザ・クラウドはアシックスに、世界中で新しいサービスを展開するために必要な柔軟性をもたらします。アシックスは現在、パラメトリック・モデリングの品質を向上させることで、ユーザーエクスペリエンスをさらに強化することに注力しています。また、より持続可能なビジネスにする ための意義深い取り組みも行っています。

3DEXPERIENCEプラットフォームのおかげで、製品の製造方法にデータを関連付ける方法を考えられるようになりました。ダッソー・システムズは、私たちのモチベーションを高めてくれるパートナーです。特に、CO₂ネットゼロ 達成に向け、また、製品設計や顧客とのコミュニケーション方法の改善ができるバーチャルツインの可能性を追求するために、 今後も協力していきたいと考えています。アシックスは、ダッソー・システムズとともに、より幸せで健康的な社会を創造できると信じています。私たちは一緒に新しいものを創造していると実感しています」

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アシックスについて

アシックスの創業哲学である「Anima Sana In Corpore Sano(健全な身体に健全な精神があれかし)」には、世界中の人々に心身ともに健康で幸せな生活を実現してほしいという願いが込められています。

アシックスは長期ビジョン「VISION2030」を策定し、「プロダクト」「ファシリティとコミュニティ」「アナリシスとダイアグノシス(分析と診断)」の3つの事業ドメインで事業を拡張しています。進化を続けるデジタル技術を活用することで、お客様ごとにパーソナライズされた製品やサービスを、環境に配慮したサステナブルな手法で開発、提供しています。

 

ホームページ:https://corp.asics.com