Alps Alpine

アルプスアルパイン社は、多種多様なエンジニアリン グ・ナレッジを全社に共有させるために3DEXPERIENCE プラットフォームを採用し、まず機械設計の業務プロセ スに着手しました。単一のデジタル環境を構築すること で、世界各国の拠点にわたって全社的に情報を管理し、 安全に共有できるようにしました。

モビリティ・ライフスタイル・クリエーターへの道

今日の自動車業界では、主要な4つの流れが大規模な変革 を 推し進めています。この4つの流れは、Connectivity (接 続性)、Autonomous/Assisted driving (自動運転/運転支援)、Shared services (シェアサービス)、Electric/Electrification (電動化)の頭文字を取 り、CASE(ケース)と呼ばれています。こうした次世代テクノロジ ーの開発により、まったく新しい形のモビリティ・エクスペリエン スへの道が切り開かれたことで、OEMやサプライヤーがビジネスや イノベーションの方向性を見直すようになってきています。こうし た企業がさらにアジリティを高めて顧客中心のビジネスを展開する には、デジタル化の活用が必要になるのは明らかです。

アルプスアルパイン社の車載情報機器事業におけるビジョンは、ドライバ ーが車に乗り込む前に起動するシームレスでスマートなモビリテ ィ・エクスペリエンスの開発に向けられています。同社は、車が ユーザーのニーズや好みに合わせて適応する未来を見ています。 たとえば、オフィスの前まで迎えに来て待機し、本人認証を行 い、シートやミラーを好みに合わせて自動調整して、運転中にド ライバーに油断がないかどうかを検知します。2019年にアルプ ス電気株式会社とアルパイン株式会社が経営統合し、新たにスタ ートしたアルプスアルパイン株式会社は、自動車業界のほかに、 建設機械業界や医薬品・医療機器業界で採用されているさまざま なユーザーインターフェースに対応する数あるテクノロジーの中 でも、特に容量センサーやフォースフィードバック・ジェネレー ターを開発しています。

アルプスアルパイン株式会社 技術本部第2機構技術部の 部長 木田 忍氏は次のように述べています。「両社を取り巻く環境 は、CASEに代表される車載業界の変化の他、AIや5Gなどとい った技術革新、スマートフォン事業のコモディティ化など、劇的 に変化しつつありました。そうした中で既存事業の収益拡大と 新規事業の開拓を進めるために経営統合を行い、運命共同体とし て事業を進めることとしました。当社の目指す姿といたしまし て、2019年4月から2022年3月まで三か年の中期経営計画を策定 し、その柱として革新型T型企業、『ITC101』を掲げています。 革新型T型企業とはT型人材のように特定分野の専門性と幅広い知 見、横の広がりをもった企業を現しています」

こうした新たな体制を通して、アルプスアルパイン社は、車載情 報機器製品開発においてCASEの主要な2つの課題に取り組もう としています。自動車の内装や全体的なドライビング・エクスペ リエンスの見直しに寄与し、車と周辺環境間のシームレスな接続 を可能にすることです。

同氏は次のように続けます。「その中で車内がまるで自宅の部屋 の一つであるかのように上質で快適な感動を与える移動空間の提 供に挑戦していきます。もう一つは、5Gの普及により自動車と あらゆるものが繋がる時代がやってきます。そうした時代におい て乗車前から乗車後まで自動車を取り巻くあらゆるサービスをシ ームレスに繋ぐといったことも当社として考えています」

「単なる改善レベルでは なく大きなビジョンに向か って大変革を行うには 3DEXPERIENCEプラットフ ォームが最適でした」

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―アルプスアルパイン株式会社 技術本部第2機構技術部 部長 木田 忍氏

長期的なビジョンの達成

自社の車載情報機器製品がますます複雑化していく中、アルプス アルパイン社はプロセスを合理化して長期的なビジョンを下支え する包括的な設計・製造プラットフォームを必要としていまし た。ダッソー・システムズの3DEXPERIENCE®プラットフォームに は、同社が必要とするすべてのものが備わっていたのです。

木田氏は次のように述べています。「製品開発は年々複雑化し、 作業量が増加しております。そのような状況だからこそRFLP(要 件仕様、機能、論理構成、物理形状)により業務を整流化>するこ と、検索機能を強化することでドキュメントを検索するのではな く改善設計のアイデア検索ができること、最後に過去の知見をAI 化することで3DEXPERIENCEプラットフォームが私たちのアシス タントの役割を担ってくれることを期待しております」

同社は、ダッソー・システムズ、及びそのビジネスパートナー企業と密接に連携することで、ニーズに対応する3DEXPERIENCEプラットフォームの機能を検討し、必要なインダストリー・ソリューション・エクスペリエンスを特定すること が できました。

「ダッソー・システムズのパートナー企業より、プラットフォームの各機能の特徴、今後の開発計画など教えていただけたことで、3DEXPERIENCEプラットフォームのどのエレメントを用いて実現すればよいのか適切に判断できたと思います。彼らもまた、今後も大事にしたいと思うビジネスパートナーです」と同氏は語 りました。

技術者は、車のラジオの3Dモデルを 3DEXPERIENCEプラットフォーム上で試験

単一のナレッジベース

3DEXPERIENCEプラットフォームを選んだ最大の要因の1つは、 アルプスアルパイン社のオペレーションを統合して、設計者やエ ンジニアが共同作業を行い、容易に情報を共有できる単一のデジ タル環境を実現する能力です。
木田氏は次のように話します。「以前から設計の効率化を図る ために様々な施策を行ってきました。その結果、多くのデータ ベースが作られ、設計者の負担になっていました」「単なる改善レベルではなく大きなビジョンに向かって大変革を行うには 3DEXPERIENCEプラットフォーム(による一元化」が最適でした」

アルプスアルパイン株式会社 技術本部第2機構技術部の須藤 学氏 は、プラットフォームを使用して、チームメンバーとの情報共有 や、3Dならびにプロジェクトの管理を行っています。

「今までは、すべて別々のシステムで運用していました」と須藤 氏は言い、次のように続けます。「単一のプラットフォーム上に 集約されて、すべての情報が繋がったことにより設計の知りたい 情報をすぐに入手することができるようになりました」

必要な情報がすべて手元にあることで、設計者は効率的かつ効果 的に作業を進めることができます。

「単一のデジタル・プラットフォームを利用し、情報が集約され たことによって、知りたい情報を検索する手間を大幅に削減する ことができました」と同氏は述べています」

「プラットフォームを使うこ とで様々なデータが一元 化管理されることによりチ ーム内で情報を共有し、業 務の割り振りがしやすくな りました」

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―アルプスアルパイン株式会社 技術本部第2機構技術部 大谷 友則氏

連携による作業

同社は3DEXPERIENCEプラットフォームのENOVIAを活用して、世 界中のお客様により良いサービスを提供しています。設 計、エンジニアリング、製品管理の各担当者が単一のシステムを通じて1つにつながり、社外の関係者にも安全な共有が可能な統 合された製品ビューを確認することができます。この共有環境で 作業をおこなうことで、同社は顧客、規制、市場から求められる 標準要件を取り込んで適合させることができ、統合された要件管 理とトレーサビリテを確保できるようになりました。今では、設 計、実行、最終試験の各段階を通じて、すべての要件の集約、管 理、把握、履行を簡単に行うことができます。その結果、バリュ ーチェーン全体のすべての人が正規化されたデータにアクセスで きるようになり、製品開発を加速し、真のコンカレント・エンジ ニアリングが促進できるようになりました。

木田氏は次のように述べています。「当社のお客様には、日本だ けでなく、欧州やアメリカ、そして中国の自動車メーカーもご ざいます。3DEXPERIENCEプラットフォームはものづくりに関す る情報を一元管理することで、国を超えた情報検索により迅速 な回答ができるなど業務の効率化に貢献しております。迅速な 対応のためには、これから設計、製造すべての作業を平行して 進めていく必要があると考えています。この同時進行のために は、3DEXPERIENCEプラットフォームが必須だと考えています」

3DEXPERIENCEプラットフォームを基盤としたENOVIAを使用する ことで、アルプスアルパイン社は以前より短い時間でお客様の要 求に対応しているだけでなく、地理的制約なしに社内の業務プロ セスも改善しています。設計者とエンジニアは、今では行った作 業を統合して変更プロセスにナレッジを直接組み込むことができ るため、設計の再利用も促進されています。それと同時に、各分 野と拠点全体におけるバリアント管理をサポートする統一された 製品アーキテクチャを構築することもできます。

アルプスアルパイン株式会社 技術本部第2機構技術部の大谷 友則氏は次のように述べています。「プラットフォームを使う ことで様々なデータが一元化管理されることによりチーム内で情 報を共有し、業務の割り振りがしやすくなりました。また海外と の情報共有がしやすくなり、そこにかかっていた時間を削減する ことができました。3DEXPERIENCEプラットフォームを導入した 後、チーム内の意思決定プロセスは変わりました。情報が共有さ れたことにより、目的や背景が明確になり、意思決定が速くなり ました」

形式知化されたナレッジベースにより、同社の設計者は、専門知 識を蓄積して、自由にアイデアを共有できるようになっただけで なく、過去の設計を再利用することもできるようになりました。

同氏は次のように述べています。「プラットフォーム導入前は、 課題が出たときにそれに関わる情報を、履歴を追って探すのが大 変でした。各自個別で情報を探し、個人で作業をしていました。 チームにとって最も良かったことは各自の進捗とグローバルでの コミュニケーションが良くなり、業務が効率化されました」

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高まる複雑性への対応

同社がモバイル・ライフスタイル・クリエーターとしての地位を 確立するにつれて、現在進められている開発のなかでも、次世代 のタッチ・インプット・モジュールが同社を代表する製品となっ ています。自動運転とAIの実現を念頭に置いて、アルプスの持つ静電容量技術、フォースフィードバック技術と、アルパインのデ ィスプレイ操作技術(GUI)を組み合わせて開発された新しい車 載入力デバイスです。ホバリング・ジェスチャに対応しており、 指先にスイッチを押したような操作感触も再現することができま す。

アルプスアルパイン社は、今や単一のプラットフォーム上であら ゆる情報の流れをつないで、製品、部品表(BOM)、製造、顧客の 各データを統合することができるため、さらに製品が複雑化して も、製品開発プロセスのすべての段階で、デジタルの連続性、デ ータの整合性、効果的な変更管理を確保することができます。

アルプスアルパイン株式会社 技術本部第2機構技術部の箱崎 妃奈 氏は次のように述べています。「このプラットフォームの良い点 は、情報が集約されたことで3DやBOMのデータと一緒に設計仕 様を連携して見ることができることです」

同社の設計者の多くは、ダッソー・システムズのCADソフトウェ ア CATIAを使用していたため、このプラットフォームのユーザー インターフェースは、彼らにとって非常に使いやすいものでし た。つまり、最小限のトレーニングを受けただけで、すぐにプラ ットフォーム上で起動して、実行することができたのです。

同氏は次のようにも述べています。「設計者にとって、このプラ ットフォームは非常に使いやすいです。もともとCATIAを使用し ていたため、3日で一通りの業務プロセスと操作は理解すること ができました。

新たな価値の創出

70年以上に及ぶアルプス電気社とアルパイン社の経験を融合させ たアルプスアルパイン社は、エキサイティングなコネクティビテ ィ・エクスペリエンスをお客様に提供したいと考えています。未 来を見据え、自社の先進生産機能と設計、ソフトウェア開発能力 を礎に前進しようとしています。

「お客様が当社を選んでいただく理由ですが、コアデバイスへの 深い知見、ノウハウがあること、そしてそれらをソフトでつない だシステム提案で、お客様が期待される以上の価値を提供できる ことにあります」と、木田氏は述べています。

新たに統合されたオペレーションと、ビジネス・プロセスを構築 する最新の拡張可能なプラットフォームを活用することで、同社 は、刻々と変化していく自動車業界に自信をもって順応していく ことができ、まわりの人々の生活を豊かにする新しい価値を創造 していこうとしています。

同氏は次のように続けます。「次の5年間に当社は企業ビジョン として人と地球に喜ばれる新たな価値の創造を掲げております。 今回導入するプラットフォームは人的リソースを新価値創造領域 にシフトさせる要になると考えています」

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アルプスアルパイン社について

アルプスアルパイン株式会社は、2019年1月にアルプ ス電気株式会社とアルパイン株式会社が経営統合し て設立された日本の企業です。電子部品、機器、インフ ォテイメント・システムを製造し、自動車・輸送機械・モ ビリティ、ハイテク、産業機械、ヘルスケアの各業界の OEMに供給しています。
製品:オーディオ機器、インフォメーション・エンターテ イメント・システム、医療機器/器具
売上(連結):8,105億円 (2020年3月期)
従業員数(連結):40,443人(2020年3月末現在)
本社:東京詳細はこちらをご覧ください。 https://www.alpsalpine.com/j/