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ウェルム(ローマの古代劇場の日よけ)

古代ローマ人は、大きな布をアリーナいっぱいに広げて観客を日差しや雨から守りました。ウェルムと呼ばれるこの巨大なカーテンをどのように広げたのでしょうか。また、使用後はどのようにして巻き戻したのでしょうか。退職後にこの謎解きに取り組んだ元エンジニアのフランス人René Chambon氏は核心をつかんだ!と思いました。

パンとサーカス

日差しの強い午後のスタジアムのベンチに座っていると、必然と大量の汗をかいたり日焼けしたりしますね。現在でも、殆どの野外スタジアムには覆いがありません。日よけ対策としては野球帽を被り、サングラスをかけ、日焼け止めクリームを塗るしかありません。しかし、何と2000年以上も前のローマ人は、巨大な布を広げたり巻き戻したりするシステムを設計・建造し、円形劇場のベンチを覆っていました。このシステムはウェルムと呼ばれていました。

ウェルムが実際に存在したことを証明する手書き書類や図画などの歴史的資料はたくさんあるものの、布を広げたり巻き戻したりするメカニズムや闘技場の壁への設置方法を解明する手がかりは殆どありません。2003年の秋、元Arts et MétiersのエンジニアのRené Chambon氏は、自由に使えるようになった時間をこの謎解きに費やそうと決心しました。古代ローマに熱烈な興味を持っている同氏は、書物による研究や円形劇場の遺跡見学に何年もかけた後、ローマ人がどのようにして面積2万5千平方メートル重さ8トンの布を広げたり巻き戻したりする施設をローマのコロシアムに設置し、ベンチに座る5万人の観客を日差しから守ることができたかを発見しました。

Chambon氏はエンジニアの経験を活かして、ウェルムの設置についての自分の仮説が正しいかどうかを調べるため、実際に100分の1の縮小モデルを作ってみました。そして、ウェルムの重量を支えることのできる材質と寸法を突き止めるため、定番の手法である構造解析計算を行ってみました。この結果はテレビ番組や講演や新聞記事で取り上げられました。

Chambon氏の熱心さとその手法の質の高さに納得したダッソー・システムズは、氏の理論を同社の設計ソフトウェアと科学的なシミュレーション・ソフトウェアで試すことを提案しました。プロジェクトの実物大のモックアップを作成し、2Dの静的な線形計算よりも現実をシミュレーションするのに適している3Dのダイナミックな非線形計算をするためです。

ウェルムの布の3Dデジタル・ジオメトリはCATIA V5を用いて作られました。布の寸法、布の断片の数、ウェルムの傾斜角度などの要因をもとに、ジオメトリを素早く簡単にアップデートすることができ、数回クリックするだけでピュイ・デュ・フーのアリーナからローマのコロセウムに切り替えることができます。この幾何学モデルは、ウェルムの3Dメカニカル・シミュレーションをサポートします。このシミュレーションはSIMULIAの非線形有限要素解析ソリューションであるAbaquesソフトウェアを使って成し遂げられます。引き手がそれぞれの巻き上げ機に加えなければならない力を正確に算出するため、特に布と巻き上げ機の力学的挙動、複合的な接触や摩擦、システムの重量が与える影響に着眼点が置かれました。この重要な作業は、デジタル・シミュレーションを行うために欠かせない条件です。シミュレーションは高度にコンピュータ化されてはいますが、ラップトップでできます。

ウェルムを広げている間及び巻き戻している間に布とケーブルに負担がかかって変形している様子を表したリアルな3Dアニメーション、さらに、常時必要な力の計算によって、Chambon氏が想像したメカニズムが実際に起動しうるということが証明されました。また、それぞれの巻き上げ機を動かすのに人間一人の力で足りることや、引き手が同時に動いていなかったり、一時的に一人欠けている場合でも機能することもこのシミュレーションによってわかりました。ダッソー・システムズの完全にパラメータ化されたモデルは、巻き上げ機の数を素早くいろいろと変えてみることにより、コロセウムに実際にある巻き上げ機のマストの数が、摩擦と重力が最もかかる巻き戻し作業も含め、引き手が加える力を考慮して算出されてものであることを証明しました。

この研究のためにセットアップされたDSの完全にパラメータ化された3Dモデルは、古代ローマのウェルムを現代の競技場jに応用するために使うことができます。その際、麻やリネンの代わりに合成繊維が用いられ、人力の代わりに電気モーターが用いられるでしょう。

このように、過去の例から学び、現代のアリーナに合わせたバージョンの寸法を素早く測り、建造することが可能です。このような施設があれば催し物に便利なだけでなく、自然災害があったときの避難所にもなるでしょう。

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