Clean Skies(クリーン・スカイ)

静寂…来るべきフライトの音?

航空産業は、温室効果ガスや騒音問題のない航空機を実現できるか?

今後10年間で就航する飛行機の数は倍増します。インドだけでも、今後20年間で200ヵ所もの新しい空港の建設が計画されています。こうした発展に伴う排出量規制に直面する航空産業は、よりクリーンな航空機の開発に取り組んでいます。現時点で、よりクリーンな燃料、軽量な機体(カーボン繊維複合材を使用)、効率の良いエンジン、優れた航空交通管理など、数多くの領域が研究対象となっています。こうした取り組みがまとまることで、業界側と規制側が設定した排出量の目標値を達成することが可能になります。

以下のビデオ、記事、インフォグラフィックは航空宇宙業界の未来を展望しています。ゼロ・エミッション飛行機によって、よりクリーンな空を取り戻せるか?グリーン・アビエーション・プロジェクトを商業ベースに乗せるには何が必要か?3Dエクスペリエンス・プラットフォームは、いかにして新型飛行機の開発に取り組むメーカーが飛行機を設計、製造、認定するために要する時間を削減できるよう支援できるか?

いつか燃料を必要としない飛行機で移動する日が来るのでしょうか?

未来の飛行機がどのような姿になるかは誰も予測できませんが、ひとつはっきり言えることは、環境にとってもっとよいものになるということです。

André Borschberg氏は、12分間まどろむだけで目を覚まします。 彼の体は睡眠を欲しますが、

-20˚Cという気温は彼の体を常に覚せい状態にします。 彼の眼下、7,500フィートには太平洋。左右には水平線が広がり、その光景はすぐ身近にまで迫っています。 1回の飛行で最大6日間、電話ボックスほどの空間で寝て、食べて、トイレに行き、ヨガをして、無燃料飛行機で飛行します。

かつての戦闘機のパイロットは、スイス人の冒険家Bertrand Piccard氏と交代で、太陽の力だけで飛ぶ飛行機を操縦して地球を一周しています。

ソーラー・インパルス 2 (Si2)の重量は車並みですが、翼長はボーイング747を超えます。 基本的には、空飛ぶソーラー・パネルと言えるでしょう。 翼の上部、機体、尾翼には17,000個の太陽電池が埋め込まれ、バッテリーを充電して飛行機を飛ばします。

すべてが順調に進めば、飛行機は2015年7月にUAEに帰還し、パイロットたちは、ソーラー飛行機による航空史上最長飛行距離の世界記録を讃えられることでしょう。 ソーラー・インパルスは、エンジニアリング史に残る業績であることは疑いないものの、その帰還を待ち受ける群衆は新しいクリーンな航空機時代の幕開けを目撃することになるでしょうか? 単独大西洋横断飛行に挑戦したチャールズ・リンドバーグがパリに到着した88年前、群衆が目にしたような、航空史における変革の瞬間と同じ種類のものなのでしょうか?

リンドバーグの飛行は商業航空機の開発の始まりを象徴していましたが、Si2のパイロットでさえも、大規模な太陽光エネルギーによる飛行が始まることはないと認めています。

中国、重慶市でのスピーチで、Borschberg氏は次のように語っています。「私たちは、ソーラー飛行機の環境面への貢献については必ずしも期待していません。なぜなら、飛行機が排出するCO2は3%に過ぎず、97%は地上および海上輸送によって生じているからです。

ジョージア工科大学航空宇宙エンジニアリングの教授、Dimitri Mavris氏にとっては、優先順の問題にすらなりえません。彼は現在のジェット旅客機が、100%太陽光エネルギーで飛ぶ航空機に代わることはありえないと考えています。「次世代のバッテリー技術あるいは100%効率の太陽電池でも、現在の商用ジェット旅客機に必要な動力にはおよばない」と彼は言います。

私たちが太陽光による飛行を追及するなら、飛行機の飛び方そのものを変える必要があると、彼は考えます。「飛行機はもっとゆっくりと飛ぶ必要があり、より大きな機体が必要となるでしょう。それでも現在の電気飛行機のように、多くの人を運ぶことはできません」。さらに乗客が値段と時間にかける期待を考えた場合、これでは見込みがないと指摘します。

では、より少ない燃料を使用し、あるいはまったく燃料を使わず、商業的にも実現可能な飛行機とはどのようなものでしょうか?

小さな一歩

長期的には、多くの航空機メーカーが飛行機の電気化とハイブリッド化を目指しています。後者では、燃料排ガスを最大で70%削減可能です。

例えば、エアバス社は、E-Fanと呼ばれる電気飛行機の開発に取り組んでいます。同社は、2017年には初の承認済み電気飛行機であるE-Fan 2.0が製造段階へ進むであろうと考えています。しかし、この飛行機には2席しかなく、使用しているリチウム・ポリマー電池の1回の充電で飛行可能な時間は1時間15分が限界です。これでは商業用航空機とは言えません。このコンセプトは、いかにしてスケールアップするかを会得し、そして未来の飛行機となる小型バージョンを作り出すことにあります。

E-Fanのバージョンそれぞれが、推進力のみに電気を使用するハイブリッド型リージョナル旅客機、E-Thrustに向かって段階的に進んでいます。この飛行機がハイブリッドであるわけは、巡航高度でバッテリーに再充電する動力装置でジェット燃料を必要とするからです。

ただし、実際の空港で、私たちがE-Thrustを目にするまでには数十年の歳月が必要でしょう。「この種の航空機にとって最大の障害は認定です」と、世界的なソフトウェア企業ダッソー・システムズ、航空宇宙・防衛産業担当のIdeas Lab主任、Jeff Smithは語ります。

「Si2のような実験段階と、数万人規模の乗客を対象とする本格運用との間では、状況は大きく異なります」

ダッソー・システムズ、航空宇宙・防衛産業担当、Michel Tellierによれば、シミュレーションが解決策です。「新たなテクノロジーやコンセプトをより正確に、より包括的にシミュレーションできれば、製品化をよりスピードアップできます」

航空宇宙企業のソフトウェア・パートナーとして、私たちは新しいナノ構造体や高度なシステムから航空機全体まで、あらゆるシミュレーションを可能にする3Dエクスペリエンス・プラットフォームを開発しました。これにより、新しい航空機のコンセプト化、設計、製造、テストにかかる時間が激減します。

Michel Tellier ダッソー・システムズ、航空宇宙・防衛産業担当VP

軽量化

ダッソー・システムズのソフトウェアは、航空機メーカーによる丈夫で軽量な次世代素材の開発および検証のスピードアップを支援します。

この数年、航空機メーカーはアルミニウム製部品を複合材(カーボンファイバーで補強されたプラスチック)に置き換えることで、機体を軽量化し、燃費の改善に努めてきました。最新の航空機は約50%が複合材ですが、「まだ改良の余地はある」と、Smithは述べています。

ダッソー・システムズは、Si2の厳格な重量条件を満たすため、機体の各種素材をシミュレーションしました。チームは主にカーボン繊維複合材でできたモデルをシミュレーションし、最終的にこれが使用されました。飛行機はできる限り軽量化が求められましたが、約90kphの巡航速度で必要とされる揚力を提供する必要もありました。

スタンフォード大学の研究者は、もしも飛行機が渡り鳥のように編隊で飛ぶことが可能になれば、たとえ各飛行機の間隔が2~5マイルだとしても、消費燃料を12%削減できることに気がつきました。

鳥から学ぶ

ハイテクの世界とは関係なく、燃料使用量を削減する一番簡単な方法は、航空管制を向上させることです。Borschberg氏によると、航空管制システムが向上すれば、飛行機はより速く着陸して滑走し、より多くの直行ルートを取ることができます。

スタンフォード大学の研究者は、もしも飛行機が渡り鳥のように編隊で飛ぶことが可能になれば、たとえ各飛行機の間隔が2~5マイルだとしても、消費燃料を12%削減できることに気がつきました。これは、飛行機の飛行中、翼の背後に空気の渦が生じるためです。この渦を、上空を飛ぶ飛行機が利用できるのです。この上昇気流を利用して、飛行機は燃料消費を節約できます。

Borschberg氏は、いつか飛行機は、地上から指示を出す航空管制システムを必要とせずに、編隊飛行するようになると考えています。「いずれは飛行機同士が相互に対話を行って、飛行経路を調整し合うようになるでしょう」と彼は語ります。「今後60年以内には、あなたもこうした光景を目にすることになるでしょう」。しかし彼でも、未来の飛行機がどんな姿になるかはわかりません。「ライト兄弟やリンドバーグの飛行機を見て、そこから現代の747の姿を予測することは容易ではないでしょう」

Tellier が考えている未来の飛行機は、空飛ぶコンピューターです。「未来の飛行機は、アーキテクチャの面ではもっとシンプルになるでしょうが、使用されているシステムとテクノロジーにおいてははるかに高度化するでしょう。現行世代のものよりも効率的で、インテリジェントになるでしょう。わかりやすく例えるなら、過去20年間で携帯電話が進化したような変遷を、航空機もたどることになるでしょう」

素材の軽量化やより複雑なシステム、バッテリー、新しい飛行フォーメーションなどさまざまな要因があるものの、今後60年間で私たちは、消費燃料がはるかに少ないクリーンな飛行機で空を飛んでいることは間違いありません。

未来には他に何があるのか?

シェイプ・シフター

まったく別の形状へ切り替えることで、さらなる効率化を得ようとする研究は数多く行われています。しかし、既存の空港インフラに適応できない斬新な形状をした航空機では、インフラの改善に多大な投資が必要となるため、参入までには大きな障害が存在します。

重い燃料を使う水素飛行機は、

新しいエンジンと機体を必要とするため、少なくとも今後数十年間は目にすることがないでしょう。しかし、それまでには、エアバス社の親会社であるエアバス・グループ(以前のEADS)製のZEHST(Zero Emission High Supersonic Transport)のような飛行機が登場するかもしれません。水素燃料ジェットは、超音速での飛行を実現します。

植物性の燃料

飛行機のデザインが将来どうなろうと、どのような編隊で飛ぼうと、液体燃料の時代はもうしばらく続くと予想する航空専門家は少なくありません。こうした点から、重量よりもバイオ燃料に注目する航空会社も存在します。つい最近、ボーイング社とパートナーである南アフリカ航空(SAA)は、タバコをベースとしたバイオ燃料を使用する契約を交わしました。2015年には、植物の種から作られる油がジェット燃料に加工され、その試験飛行がSAAによって行われます。

ハイブリッドから水素燃料飛行機まで….より環境負荷の少ない飛行へ

1979年4月、太陽エネルギーによる初の有人飛行機が3分間の空中旅行へと旅立ち、高度40フィート(12m)、飛行距離0.5マイル(0.8 km)を記録しました。飛行機のパイロット兼考案者であるLarry Mauro氏は飛行直後、報道陣に対して、飛行中に生み出される太陽光発電の電気だけで離陸し、1日中飛行できるように、このモデルに改良を加えたいと語りました。

35年後の2015年3月9日、月曜日の早朝、ソーラー・インパルス2(Si2)は、太陽光だけをエネルギー源とする飛行機としては初の地球一周飛行へ挑戦しようとしていました。

しかし、Mauro氏が期待したように、ソーラー飛行機が未来の航空機なのでしょうか?航空機の専門家は、私たちが近い将来、ソーラー飛行機に搭乗する可能性は少ないと考えています。ソーラー飛行機でないとしたら、未来の航空機はどんな姿になるのでしょうか?もっと読む…

注記:ビデオ、インフォグラフィックならびに掲載されている記事は、2014年6月27日から2014年9月5日にかけてbbc.comの広告特集として公開されたもので、BBC Advertising Commercial Productionチームがダッソー・システムズと連携して作成しました。

画像提供元
Progress Eagle - Oscar Vinals
Solarimpluse.com